第22話
俺がそう心に決意をしていると、舞も拳を固めている。
「あたしたちのとりあえずの目標は、兄貴に追いつくことだからね!」
「じゃあ、俺は追い付かれないようにしないとか?」
「ふふん、勝負だよ!」
……いや、舞には追いつかれたい気持ちはあるのだが、彼女らの目標として常に先にいたほうがいい気持ちもあるんだよな。
やる気満々の舞だが、俺はおそらく絶対に負けることはないだろう。
だって俺、睡眠取らなくてもいいんだもん。
……別に寝なくてもいいんだよな。
異世界転移してからの俺の体は不眠不休で活動できるようになっており、それは今も続いている。
もちろん、眠ってもいいのだが、眠らなくても魔法を使えば体を元気な状態にリセットできる。
あの女神のせいで、かなり人間離れさせられているが、まあ便利ではある。
別に普通に寝ることもできるわけだしな。
とりあえず、今夜のうちにやらなければならないことがあるため、色々と行動しておかないとな。
夕食を食べ、夜やるべきことを大体終えた俺は再び『リトル・ブレイブ・オンライン』の世界へとログインした。
……こっちの世界も夜になっているんだな。
掲示板とかを見てみると、どうやら夜で出現する魔物が変わるエリアもあるようだ。
……盗賊ゴブリンは大丈夫かな? いなかったら、武器の新調ができないんだよな。
さて、ここからやることは二つだ。
まず、俺の武器の新調。
そして、金策だ。
街のスキルブックやクランハウスの購入のために、とにかく大量の金が必要だからな。
一応、レベルを30に上げるというのも目標ではあるが、それは盗賊ゴブリンを狩っている間に達成できるだろう。
というわけで、盗賊ゴブリンが出現する山岳エリアにきた俺は早速狩りまくっていった。
もはや、どちらが盗賊かわからないレベルで狩りまくってやったぜ。
結果三時間ほど狩って、盗賊のナイフを二本手に入れた。ステータス強化はないが、ドロップ率アップの効果がついているので、これは結構いいのでは? と思った。
レベルも27まであがったので、ついでに依頼にあった盗賊ゴブリンリーダーも狩りに行くとするか。
俺は【影遁の術】と【鋭い感覚】を使用しながら移動していき、盗賊ゴブリンリーダーを探していく。
……五つの反応があるな。
一つの反応が、盗賊ゴブリンとは少し違う反応だ。
これは、盗賊ゴブリンリーダーかもしれないな。
【影遁の術】を切らさないように移動していくと、五体の魔物を見つけた。
その中に、盗賊ゴブリンリーダーもいる。
……何か獲物を探しているようだな。
四体の盗賊ゴブリンと一体の盗賊ゴブリンリーダー。
これは、【暗殺者】らしい戦いができるかもしれないな。
俺は【影遁の術】を使用しながら近づいていく。
夜ということとこの辺りは木々が多いため、向こうもまだ気づいていないな。
俺はゆっくり近づき、列からわずかに遅れていた盗賊ゴブリンの背後から近づき、その口元を押さえながら喉元を切り裂いた。
悲鳴は漏れなかった。他の魔物たちは、馬鹿なようでまだこちらに気づいていない。
残りは四体。
……夜の【暗殺者】のムーブは強いな。
もちろん、仕留める瞬間に、【暗殺宣告】を使うことも忘れない。
そうして、さらに二体倒したところで、
「ガアア!」
盗賊ゴブリンリーダーがこちらに気づいた。遅いっての。
咆哮を上げている間に、もう一体の盗賊ゴブリンに近づき、短剣で撃ち合う。
近距離戦で、俺の技術に勝てるわけがなく、あっさりと仕留めてやった。
残るはリーダーだけ。盗賊ゴブリンリーダーは一気に突っ込んできた。
速いな。一瞬で迫ってきた盗賊ゴブリンリーダーが短剣を振り抜いてきた。
その場で、近距離での打ち合いを行う。そのすべての攻撃を捌きながら、後退際に左足で小石を蹴り上げた。
「グア!?」
見事に盗賊ゴブリンリーダーの顔に命中する。
隙は一瞬。だが、戦闘中の一瞬は命取りになる。
俺は【致命的な一撃】を発動し、喉に短剣を突きさす。
「ギュ!?」
悲鳴とともに後退する盗賊ゴブリンリーダーだが、まだ倒れない。
一応、かなりのダメージは入っていると思うんだがな。
盗賊ゴブリンリーダーが激昂とともに突っ込んできたが、俺は短剣を投擲する。
怒りで反応が遅れたようで盗賊ゴブリンリーダーはギリギリで短剣を突き出して弾いた。
ただ、ギリギリだったためにそこで体勢を崩す。
弾かれた短剣を掴みながら、一気に接近した俺はその喉元にもう一度短剣を叩き込む。
一撃で足りないなら、二撃、三撃だ。
そうしたら、あとは静かな夜のお待ちかねだ。
……楽勝だったな。
盗賊ゴブリンリーダーは何やら普段見ないアイテムをドロップしている。
ちょっと大きい魔石だ。わざわざ、盗賊ゴブリンリーダーの魔石と書かれているし、これをギルドに持って行ったほうがいいだろう。
投擲した短剣を回収した俺は、クエスト達成報告のために一度ギルドへと戻った。
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