第18話


「久しぶりの……太陽だ!」


 陰鬱としたダンジョン内を一人徘徊していた俺は、久しぶりに感じる風にテンションをあげていた。

 やっぱり、ああいうジメジメした場所よりは外のほうがいいな。


 坑道ダンジョンを抜けた俺は早速新種の魔物を探して近くを徘徊する。

 新しいエリアに来た時の楽しみといったら、魔物だろう。


 それはもう異世界でも新しい場所についたらまずは魔物を狩って回っていたものだ。

 笑顔で魔物をかる姿について、女神には注意されたものだ。


 坑道ダンジョンから先はやはり別エリアという扱いのようで、魔物のレベルが高くなっている。

 レベル20後半か。

 今の俺よりも上の魔物だが、なんとかなるだろう。


 早速発見したヘビーラビットという魔物と戦闘を開始する。

 向こうもこちらを敵と認識したようで、すぐに突っ込んでくる。

 ヘビーラビットの攻撃をかわしながら、短剣を振り抜く。


 攻撃はかわされる。

 向こうも敏捷を活かした戦い方をする魔物なので、回避能力が高いな。


 似たような戦闘スタイルの者同士が戦うと、ジリ貧になるんだよな。

 異世界でも何度か敏捷重視の魔族がいたものだ。


 そういう者同士がぶつかった場合、最後に決めるのは……技術。

 俺は数度のフェイントを織り交ぜての攻撃を放ち、隙だらけとなったヘビーラビットの脇腹を切り裂いた。


 ……敏捷タイプは耐久力がなくて助かるな。俺としては、ガイコツ兵に耐久重視のほうが時間がかかって面倒だ。





 街に、到着した。

 門に近づくと、マップ名が表示される。

 ……第二の街『イレルナ』だそうだ。


 第一の街もそれなりの規模だったが、ここはさらに一回り大きいな。

 街に入ると、【イレルナ到着者(Sランク)】という称号が手に入った。


 称号一覧を見てみると、第一の街に関して俺は(Eランク)だった。

 ……もしかしたら、到着順で入手ランクが変わったのかもしれない。


 チュートリアルを楽しみすぎてしまったのが原因だろう。

 ただ、どっちが正解かは分からない。


 【暗殺者】を入手するにはあのタイミングじゃないと難しいだろうしな。

 新しい街に着いた俺は、さっそく近くにいるNPCに声をかける。


「ちょっと聞きたいんだけど……俺異邦人。この街と前の街での違いとかってある?」


 NPC相手なら多少適当に話しかけても大丈夫だろう。


「前の街ってアンタレスか?」

「そうそう。アンタレス。何か違いとかってないか?」


 これまでの傾向から、分からないことはだいたいNPCが知っているようなので、困ったら頼ればいいだろう。

 いきなり話しかけられても嫌な顔せずに男性は答えた。


「そうだなぁ……アンタレスに比べると店の品揃えとかはいいんじゃないかな? あとは周囲にいる魔物がちょっと強かったりするな。そこらへんは冒険者ギルドに行けば色々聞けると思うぜ」

「へぇ、そうか」

「あとは、ここでならクランハウスを借りることもできるから、レベル30以降ならクランも結成できるな」

「……へぇ、クランハウスか」


 クランといえばMMOなどでは定番だな。クランハウスを借りるのが、クランを結成する条件なのだろうか?

 色々と恩恵もあるだろうし、そちらは後で確認しておきたいな。


「ああ、あと転職神殿にはもういったか?」

「いやまだ行ってないな。次の転職ってレベル30にしないとなんだろ?」


 確か、ネット掲示板にそう書かれていた。

 だから、最初に無職ではじめて隠し職業を見つけ次第転職する、というのも一つの手だと。

 その隠し職業に関しては、情報が錯綜していて入手方法は様々なんだけど。


「そうだな。でも、この街でしか手に入らない汎用スキルブックもあるからな。見に行ってみるのはいいかもだぜ?」

「汎用スキル?」

「なんだ、異邦人なのに知らないのか? 職業スキルと組み合わせると色々できるんだろ? まあ、俺は異邦人じゃないからな。あとはおまえさんの方で試してみたほうがいいんじゃないか?」


 ……なんか、色々と面白そうだな。

 職業スキルだけでは少ないと思っていたのだが、あくまでこの街に来るまではチュートリアルなのかもしれない。


 実際、レベル上げもそんなに大変じゃないし、ここからがゲーム本編開始、くらいの感覚なんだろう。


 レベル30で転職したら、そこからさらにスキルも増えるだろうし、やれることの幅が増えていきそうだ。

 さっき聞いた話を色々やってけば、また称号とかも手に入りそうだな

 あとで話を聞きに行ってみようか。


「了解。とりあえず色々行ってみるわ、ありがとな」

「おう。頑張ってくれよ。異邦人が強くなってくれれば俺たちも安全に暮らせるからな」


 ニコリと微笑んだ彼とそこで別れた。

 さて、とりあえず簡単に片付きそうなものからやっていくとするか。





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