第13話



 ようやく、オークとかと戦っても問題ないくらいのレベルになったのではないだろうか?

 少なくとも、この周囲にいる魔物相手だと苦戦することはないな。

 まあ、レベルだけじゃなくて称号や装備の関係もあるのかもしれないな。


 一度、トイレにも行きたくなってきたので、俺は一度ゲームからログアウトを行った。


 軽く背中を伸ばし、階段を降りていく。ガチ勢たちはトイレの時間も惜しむほどにゲームをしているのかもしれないが、俺はあくまでエンジョイ勢。


 トイレから出るとちょうど階段を駆け降りる音が聞こえてきた。

 天使だ。ではなく、舞だ。


「あっ、兄貴ー。兄貴もトイレタイム?」

「そんなところだ。そっちはまだ配信してるのか?」

「うん、やってるよ。あっ、今ちょっと休憩挟んでるから、兄貴ちょっと待ってて!」


 舞がそう言ったので、俺は階段付近で休んでるとトイレと手洗いを終えた舞が戻ってきた。


「どうしたんだ?」

「いや、情報共有しようと思ってさ。兄貴は今どんなか感じかなっておもって! あたしたち、結構いい感じにレベル上げも出きてるんだよね!」


 ドヤ顔とともに胸を張る舞はまさに天使だ。


「おお、さすが舞だな!」


 やはり俺の義妹は天才だな……。


「へへ。今レベル9なんだよ。トップの攻略組と同じペースでレベル上げられてるからすごいっしょ」

「……え? 今はレベル9がトップなのか?」

「うん!」


 笑顔で頷いた舞に、俺は少し悩む。

 ……あれ? 俺のレベルいくつだっけ? 16じゃなかったっけ?


 もしかして、俺かなり進んでる? 個人的にはエンジョイ勢のつもりだったが、なんか攻略組みたいなハイペースじゃない?

 あっ、ソロで狩りしてるからか? こういったゲームだと経験値が分配されるだろうしな。


 俺が驚いて黙っているのだと思ったのか、舞が口を開いた。


「あっ、あたしたちって『ディメンション』の攻略担当だからね。ちょっとばかりガチでやってるけど、でも一緒にやるときとかは気にしなくていいからね兄貴!」

「そうか……」

「ちなみに兄貴はレベルいくつなの? パーティーとかは組んでるの?」


 舞にどう答えようか迷う。

 それから、少し迷ったが……俺は真実を伝えることにした。


「聞いて驚け。俺はレベル16だ」


 だって、舞に褒めてほしいし!


「え!? ほんと!?」

「ああ。ほんとだ。ちなみにソロでやっててな。ずっと東の村を拠点に戦ってたんだよ」

「……え? 東って……あそこに最初から行ってたの!? あそこの難易度やばいって噂だよ?」


 驚きながらも目を輝かせている舞。それはまるで自慢の兄に注ぐ視線のようで、俺は優越感があった。


 これからも、舞に尊敬の目を向けられるよう、攻略組並みに頑張っていくしかねぇなこれは!


「そうでもないぞ? 出てくるモンスターはナイフモンキーっていう魔物だけでな。群れで動くけど、動きは単調だし、慣れてくれば余裕余裕」

「そうなんだ……。あっ、お兄ちゃん! 戦闘動画とかない!? ちょっとみたいんだけど!」

「おお、いいぞぉ。最初にカメラオンにしてたから映ってるはずだ」


 ぴょんぴょん俺の背後をついてくる舞が非常に可愛い。

 部屋に戻った俺は、VRマシンが接続されているパソコンを確認する。

 容量はまだまだ全然余裕であるな。そちらに現在まで録画されている動画を開き、舞がみたいという場所を見ていく。


 俺が東の森でナイフモンキーと戦っている映像だ。

 すでにその時にはモンキーナイフを一本手に入れているので、だいぶ狩りやすくなったときだな。


 今回見ているのは俺の背後から映した三人称視点のものだ。

 四体のナイフモンキーがこちらに襲いかかってくるが、俺はそれをすべて紙一重でかわしながら短剣を振り抜いている。

 背後からの奇襲も、一目も向けずにかわして捌いている姿を、舞は目をキラキラとさせながら見ていた。


「あ、兄貴……す、すっげぇ! すっごいよ! この戦闘動画、めちゃくちゃかっこいいよ! でもなんでこんなひょっとこの仮面なの?」


 カメラで見て気づいたが、俺は仮面をつけてたんだな。

 ゲームの機能なのか、視界が妨げられることがなかったので、まったく気づかなかった。


「顔隠すのにちょうどいいと思ってな。ほら、なんか体いじるとうまく使えないとか書いてあったから……」

「……え? じゃあ、今のまんまの顔でやってるの!? あれって、別に顔はいじっても大丈夫だよ?」

「え? マジか……」

「あ、兄貴そんなにおちこまないで……」


 背中を撫でてもらった。お兄ちゃん、元気一杯。


「まあ、仮面つけてても特に邪魔じゃないしな。このままやっててもいいだろうさ。最悪現実の顔を変えれば問題ないしな」

「いやいや、変顔で過ごすにも限度あるよー」


 変顔しなくても変身魔法があるからいくらでも誤魔化せるんだが、それは伏せておこう。


「そうなんだっ。兄貴、これ職業なに? 戦士?」

「いや、【暗殺者】だ」

「……え? それってもしかして隠し職業!? どうやって手に入れたの!?」

「最初のチュートリアルあっただろ? あれで出てくる盗賊50人全部倒したら、【暗殺者】と【剣闘士】が出てきたんだよ」


 俺は該当の場所が映っている動画を見せると、舞は食いいるように見ていた。


「え? ええええええ!?」

「どうした舞? ゴキブリでも出たか!?」

「その名前出さないで!」

「ご、ごめん……」


 舞が本気で嫌がったので、俺はしゅんとする。




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