第5話
まずは新規キャラクター作成からか。
なんか、過去の俺がVRカプセルに基本データを保存しているらしい。
それを基に、俺のデータを作り出す。
……性別は、変更できないのか。それは仕方ないな。
また、現実の体から大きく変化させると、現実に戻ったときに違和感を覚えることがあるらしい。
……なるほどな。
なら、まあ、体は弄らなくていいか。次いくか。
細かい設定が色々とあるみたいだな。
気になったのは、録画に関してというのだ。
詳しく見ていくと、どうやらプレイデータを録画しておけるらしい。
声あり、声なしバージョンで、俺の一人称視点のものと、俺の背後からの三人称視点のもので自動で録画してくれるらしい。
VRマシンの容量によってはできないらしいが、俺はひとまずオンにしておいた。
何かトラブルがあったときに証拠を残せるのは強い。
俺も異世界では、女神の「なんでもしていい」を拡大解釈して色々やってきたからな。
そのたびに、女神が人間界に謝罪をしていたものだ。
実際、注意書きにも書いてある。録画オンにしておいたほうがトラブルを避けられることもあるかもしれません、と。
そうして身体データを選び終えると、俺は見知らぬ白い空間へと飛ばされた。
……フラッシュバック。
まるで女神に召喚されたときと同じような空間だったため、ちょっとムカついてくるな。
『ようこそ、「リトル・ブレイブ・オンライン」の世界へ。異邦人様』
俺の眼前には美しい見た目の神様っぽいやつがいた。
……女神みたいな案内人だな。ついつい殴りたくなってきてしまったぜ。
とりあえずは、ここで職業などを選ぶ感じか。
最初から選べる職業はあまりないようだ。
……へぇ、わざと選ばない選択肢もあるのか。
備考を読んでみると、どうやら『リトル・ブレイブ・オンライン』の世界での活動次第で、解放される職業、スキル、称号などがあるようだ。
すべての人間が、その人の個性を発揮できる世界を構築する、というのがこのゲームの制作者の考えのようで、プレイヤーによって最適解が変わるようになっているらしい。
確かに、オンラインゲームとかだとステータス振りや使用スキルなど、すべてだいたい決まっているからな。
攻略サイトを見れば、ステータスやスキルポイントの振り方は大体わかるからな。
変なステータスやスキルの振り方をすると地雷認定されて、パーティーを組みにくくなるものだ。
こういったゲームで個性を出そうとしても、結局最適解より強くなるのは難しいことが多い。
なるほどなぁ、と思う。
転職するには一定のレベルまで上げる必要があるようで、最初からその隠し要素を狙いに行くという遊び方もできるのか。
そこは、サービス開始したてから遊ぶゆえの楽しみがあるよな。
今選べるのは戦士、魔法使い、盗賊、僧侶の四つだけ。
……まさか、オンラインゲームの職業がこんな少ないわけがないだろう。
ということは、隠し職業がいくつもあるんだろう。
……うーん、狙ってみたいな。
俺としては、暗殺者がリアルと同じスタイルなので、狙いたいものだ。
俺の異世界での戦闘スタイルは……女神から言えば、まさに暗殺者、だそうだ。俺は忍者を意識していたのだが、女神には否定された。ムカつくぜ。
勇者らしくない、と何度も言われたものだ。女神だけじゃなく、原住民からもな。
暗殺者か。
どうやって解放されるのか分からないが、この世界でも暗殺者を目指してみるのもいいかもしれないな。
とりあえずは無職にして次だ。
装備は全部で五つまでつけられるのか。
装備に関しては特に、これをつける、という決まりはないようだ。
例えば、全部武器でもいいし、全部防具でもいいようだ。
さらに、見た目に反映させるか、させないかも選択できるらしく……確かにこういったVRMMOだと欲しくなりそうな機能だ。
とりあえず、短剣を二本選択し、残りは適当な服。まだ最初の装備だし、モブ感が凄まじいな。
おっ、仮面もあるのか。これで顔を隠しておくとしようか。
仮面、といってもひょっとこだが。
とりあえず、キャラクターメイクはこんなところか。
プレイヤーネームは……本名が佐久間悠斗だから、ユートでいいだろう。
舞と一緒にやるとき、兄貴ではなくユートとか、ユートさんとかで呼んでもらえるかもしれないしな!
異世界で培ってきた思考力を全力で発揮しながらニヤニヤしていると、神様が邪魔してくる。
『これより、チュートリアルを開始します。スキップも可能ですが、その場合はチュートリアル報酬は受け取れませんがどうしますか? また、チュートリアル中に獲得したものはすべて本編に引き継ぐことが可能です。どうしますか?』
アイテムがもらえるならやるに決まっている。
現実世界との感覚の違いも知りたいしな。
そうして、俺は『リトル・ブレイブ・オンライン』の世界へとログインした。
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