夏目 晴斗10話 映画の中にいるみたいだ

「ちなみに晴斗君はこの地下施設、どれくらい深いと思う?」


普段、国家機密の地下施設なんてフィクションの中でしか見たことがない晴斗にとって、正確なイメージを持つのは難しかった。頭の中で映画やドラマのシーンを思い浮かべながら、適当な数字をひねり出し、三神の問いかけに少し戸惑いながら晴斗は答えた。


「え……と、地下10階くらいですかね?」


「んーおしい!!」


三神は突然、またも筋肉を誇示するようにポーズを取り、胸筋をピクピクと動かし始めた。晴斗はすでにそのパフォーマンスに慣れつつあり、内心では微妙なツッコミを入れたくなっていた。


「(ちょっと変わってるってレベル超えてないか?)」


三神は大声で晴斗に答える。


「正解は!!縦に60メートル!横幅80メートル!!地下7階!!!敷地面積4800平方メートル!!地上で言うなら、15〜20階建てのタワーマンションが2棟分……だ!!!!!」


「お、おぉ……それはすごいですね……」


晴斗は少し圧倒されつつも、目の前で筋肉を強調する三神が、次もまた何か決めゼリフを言うたびにポーズを取るのではないかと心の中で予感していた。


そのまま少し考えたあと、晴斗は疑問が湧き上がってきた。


「ん?でも地下7階……ですよね?タワーマンションが15~20階建てって言ってましたけど?」


「そう!晴斗君!その点に気づくとはさすがだ!!」


三神は晴斗を指差し、またも勢いよく答えた。


「普通のビルなら1フロアは3メートル程度だ。しかしここは国家機密の施設だ!1フロアの高さは約6.6メートル!!」


「さらに、最下層には高さ20メートルにも及ぶ演習場が併設されている!!!」


「だから、地下7階建てでもタワーマンション15〜20階建てに匹敵する規模があるんだよ!!!」


晴斗はようやく納得しながら、ふとまた一つの疑問を投げかけた。


「……なるほど。でも、なんでそんなに1フロアを高くしてるんですか?」


「それだよ!そこがまた素晴らしいところなんだ!」


三神は晴斗の質問に満足そうな顔をし、腕を振り上げながら説明を続ける。


「広い空間が必要なんだ!ここでは、いろいろな実験が行われていて、大型の実験機器や装置も設置されている。天井が高ければ、実験や研究に必要なスペースを確保できるし、さらに空調や排気、配管の設置においても有利になる。」


「それにサーバールームやセキュリティセンターでは、熱や粉塵を管理する必要があるから、広い空間のほうが効率的なんだ!」


晴斗は頷きながら、三神の熱心な説明を聞いていた。


「さらに!ここで働く人たちは、長時間この地下施設にいることになるだろう。だから、広々とした空間を作ることで、ストレスを軽減させる効果もあるんだ!」


「おぉ……なるほど」


三神はさらに続ける。


「そして!セキュリティの観点からも天井が高い方がいい!見てくれ!」


三神に促され、晴斗は天井を見上げた。そこにはカメラが各所に設置されていた。


「このように天井が高ければ、カメラの視野も広がり、フロア全体を効率的に監視できる。死角が少なくなり、セキュリティが強化されるんだ!」


「へぇ、すごく計算された設計なんですね」


「そうだとも!さらに、未来のことも考えているんだ!」


「未来ですか?」


晴斗は少し首をかしげた。


「そう、この施設は長期間使用されることを前提に設計されている。つまり、将来的に改修や設備の増設が必要になったとしても、フロアごとに広い空間があることで、柔軟に対応できるんだ!」


「なるほど、そこまで考えられてるんですね……」


「そうだとも!これは国家機密の施設なんだから、当然……さ!!」


三神は再びポーズを取り、誇らしげに胸筋を動かしながら、さらに各フロアの詳細な説明を始めた。

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