能力規模主義の世界を身体強化系能力で戦い抜く~前世吸血鬼な私には最低ランクとか関係ないです~
夜桜月乃
そんな展開、面白いと思わない?
学校からの下校途中、不思議な光景が頭を過った。
それは、私がこれまで見たことのない光景。
山に囲まれた自然と、その中にあるファンタジー系の創作に登場するような建物、ゲームのボスキャラに居そうな大男や獣人の少女、そしてドラゴンまで居た。
「え……?」
なに?これは。
私は誰?
縁乃愛、中学一年になったばかりの、Dランク能力者だ。
立ち止まり、額を押さえて硬直すると、隣を歩いていた友人――反町紅巴が心配そうにこっちを見て来た。
なんだろう。この顔をどこか別の場所で、それこそ今頭に過って来た場所で、見たことあるような気がする。
「……あ、え?あぁ……」
その時、私の中で何かが繋がった。
なるほどなるほど。転生して前世を思い出した、そんな感じなのか?いや前世で死んだという記憶は今のところ全くないし、前世の私が死ぬような可能性なんてほぼ見当たらないけど。
私は前世で、吸血鬼だった。
【紅血姫】という異名を持つ、トップクラスの実力者で、名前はノヴァ。
今世の名前、乃愛と響きが似ているのは多分たまたまだろう。
隣で不思議そうな表情をしている少女は、前世でノヴァが心を許した数少ない友人、【紅炎】の異名を持つ竜人のイヴに似ている。
私のように前世を思い出すこともあるかもしれない。というか絶対思い出す。
イヴと紅巴がきっと同一人物と確信できるのは、外見以外の要素にもある。
それは、この世界に存在する能力。一人一つずつ有しており、彼女のそれはずばり【紅炎】。そのまんまにもほどがある。
ちなみに、私の能力は【形質変化】というもの。
この世界、というかこの国では、能力規模主義の下ランク付けがされている。
AからDランクの四段階で分けられており、Aランクが最高。
それぞれの内容としては、Aは熟語系、概念系の、操る規模が計り知れないもの、Bは自然現象系やCからは逸脱した規模のもの、Cは自然現象ではないが、炎や水など、所謂属性魔法のようなもの、Dは身体強化系といった、自己強化するもの。
【形質変化】はDランク、【紅炎】はCランクと言われている。前者に異論はないけど、後者は多分Bランクで良いと個人的に思っている。
また、能力にはさらに段階があると言われており、それは【上限解放能力】と言われている。その境地に至った人は【覚醒者】と呼ばれる。
「乃愛!ねぇってば!」
私は紅巴に体を揺さぶられて、今更ながら彼女に対し「えっと、なんだっけ」という間抜けなリアクションを返した。
「規模主義のランク付けに対しての話だよ。」
なんてタイムリーな話題なんだ。過去の私たちに賞賛を送りたい。
「あー、そうでしたね。まぁ、違和感はかなり感じるランク付け」
一般的に、Aが強くてDが弱いという感じでこのランク付けは使われている。
Aが強いのは納得いくし、Bもまぁという感じだけど、D弱いかなというのが正直なところだ。
前世の知識的なのでアップグレードして、私の考えを紅巴に話すとしようか。
「Aはちょっと規格外な部分あるので置いとくとして、Dの立ち位置ですよね。身体強化、確かに弱く聞こえますけど、戦闘に置いて結構役に立ちやすいと思うんですよね」
身体能力が上がるということは、相手より速く動け、相手より力が強くなるということ。つまり、技は避けれるし、力で押さえつけることもできる。中遠距離主体の相手に対し、接近できればかなり優位に立てる、と思う。
「Bランクは多分、大規模過ぎて小回りが利かないでしょうしね。Cはエンチャント的使い方とか魔法的使い方で、近接の補助に使ったら強いんでしょう。まぁ、Dの身体能力でねじ伏せれそうですよねそんなこと言ったら」
私が肩をすくめながらそんなことを言うと、紅巴は
「確かに?」
と、納得していそうなしていなさそうな反応をした。
「あなたはどう思う?」
私は彼女にそう聞いてみた。
「まあ、乃愛と大体同じ。私の能力、Cって言われてるけど、多分その辺のCより強いよ」
「あなたのは多分Bランク相当なんで例外では?」
【紅炎】は太陽のプロミネンスを指す言葉。温度が五千度を超える、コロナ中に存在するプラズマガスだ。それをそのままこの場で再現できるとしたら、かなりヤバい力である。プラズマ自体ありふれた物体の状態で、それをすべて操れるとしたら、Bランク以上の規模を誇ることになる。余談だけど、自然界のすべての物質は六千度あればすべて気体と化す。
そして、そんな能力たちの境地が【上限解放能力】。
能力は解釈によってその姿を変える。といってもまだそう考えられるという段階で私はとどまっているけれど。
能力の発動は、基本イメージすることで起こる。とどのつまり、自分がそう強く思えばいいわけだから、そう解釈しているのならそれが真実ということ。だから、解釈によってその姿を様々に変化させることができるのではないかと考えられる。
なら、解釈を広げることさえできれば、弱いと思われている力で強者を倒すことができるのでは?
私の中にある前世の知識。それを能力に生かすことができるのでは?
「ねぇ、紅巴さん。弱いと思われてる奴が、実はとてつもなく強かった。そんな展開、面白いと思わない?」
「最弱が最強だった的な?」
「なんかそう言われるとありきたりな気がしますね。大体そんなとこだけど」
まあ、なんだ。面白いことが分かったんだから、さらに追及してみよう。
覚醒者……是非なってやろうじゃない。
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