元・訳あり冒険者、ダンジョン潜ってハーレム領主に成りあがっていく!
犬鈴屋
プロローグ
プロローグ:偉大な領主
森の奥深くにありながら豊かな食糧と町民を守る大城壁、馬車の往来が激しい舗装された道路を備える大都市カインズ。
そのカインズの街の中でも一際大きい建物、木漏れ日が強く当たる一室にて巨体の老男が今まさに命の灯が消えようとしていた。
彼の周りには多くの美しい老婦人が囲んでおり、その老婦人の外側には若い男女がいる。
その男の名は、カイル。
この大都市カインズの初代領主であり、一から街を築き上げてきた大英雄である。
だが大英雄と言えど人の身であるカイルには、全てのことを成し遂げるのは不可能だ。
それを可能にしたのが彼の周囲にいる老婦人たち、つまり妻たちである。
彼女たちは全員が正妻でありながらも和を尊び、カイルの偉業を支え続けてきた。
ある者は難攻不落の軍隊を率いる将軍として
ある者は誰にも挑めなかったダンジョンを攻略する踏破者として
ある者は世界の経済をも変え得る大商会の会頭として
時にはカイルを助け時にはカイルに助けられることを繰り返した彼女たちとカイルには、強固な絆と愛情で結ばれている。
周囲にいる若い男女は、その強固な絆と愛情の証であろう。
カイルは動かない目を僅かに開き、自分の妻たちを見渡していく。
ケモノ耳を持つ獣人族もいれば鋭くとがった耳を持つエルフ族やダークエルフ族、カイルと同じ人族も何人かいる。
そのどれもが掛け替えのない思い出と愛情を共にしてきた愛しの妻たちである。
優劣なんてものはない。思い出せる記憶も楽しかったものばかりである。
周囲を見渡して満足したカイルは、最後の言葉を紡いでいく。
「みんな。今まで俺に付いてきてくれてありがとう」
どの妻たちもカイル最後の言葉を聞こうと耳を傾ける。
「俺は先に行く。もしお前たちが再び道に迷ったならば、俺を目印についてきてくれ」
カイルの身体からは、どんどん力が抜けていく。
「そして願わくば、来世もお前たちと会えることを願っている。一時の別れだ、さらば愛しき妻たちよ」
そういってカイルは目を閉じていった。
最後、目に移ったのは最初に自分を信じて付いてきてくれた黒髪の少女。
あぁそうだ。俺の人生はこの少女と出会った時から始まったんだ。
大変で苦しい時は何度もあった。死にかけた時もあった。
それでも自分に付いてきてくれた彼女や彼女たちに助けられ、ここまでやってくることができたんだ。
俺は満足だ。何も思い残すことはない。
父が最期に遺した言葉の意味、私を育ててくれた母の気持ち、全ての意味が分かった。
私はなんて幸せ者なんだ。
願わくばまた彼女たちと来世でも出会い、同じときを過ごせますように。
その日、カインズの街を創設した偉大な初代領主が亡くなった。
町民は悲しみに暮れ、世界中の貴族からも追悼の使者が送られてくる。
だがカインズの街はいつもと変わらぬ日常が続いていた。
カイルの意志を継ぐ、彼の妻たちやその子たちがいる。
そして意志は引き継がれていくだろう。いや引き継がれる。
なぜならカイルはそう妻や子供たちに教え込んでいたからだ。
彼が書に遺した座右の銘からも分かる。
【
これは妻の1人の故郷に語り継がれる言葉であり、彼と妻たちを結ぶ絆の言葉でもある。
* * * * * *
これから送る物語は、このカイルと言う男がどのようにして領主に成りあがっていったのか。
どのように女性たちと出会い想いを通わせてきたのか。
その全てを記しているため、カイルという男の軌跡と言って差支えないだろう。
そしてこの物語は、カイルの失敗も記しているのは同じ轍を踏まないようにという意味合いも込められている。
それではカイルという男が初めて歴史の表舞台に出てくるまで、時間を巻き戻すとしよう。
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