第23話 ソマとリンネ3

「願い事は、2つほど‥」ソマは、マネが借りて来た絵本の中で王子様がお姫様を抱っこするシーンに憧れを持っていた。流石に家族には言えなかったけど。




「ん、まあいい。お姫様?抱っこか」リンネは立ち上がり、ソマの前方からソマの脇の下に身体を滑り込ませた。そして、ソマを右肩に担ぎ込んだ姿勢で姿勢を伸ばす。




「えっ、えぇ、きゃあー」あきらかに、この体勢は違うでしょう。


「あっ、違った?やっぱり、わかんないわ」と言い、再度ソファーに無雑作にソマを放り投げる


「えっー。もう、何なのよ」フカフカのソファーのためクッションが効いているので痛くはないが、態勢を崩して最悪の心境である。




「じゃあ、もう一つのやつは?」あきらかに、リネンは面倒くさげに言い放つ。


(もう、なんなのよ。この雑な扱い。私ったら何を期待していたのかしらバカみたい)


「髪を、撫でてほしいの。頑張ったねって」あまり期待はしてないが、言うだけ言ってみた。


「髪を、撫でる?」さっきと同様に?の顔をしている。


「あっ、やっぱりいいです。あの、気持ちだけで」何をされるか、わかったもんじゃない。


聞こえていないのか、リンネは私の隣に座り体を横に向けて私の方を向いた。


(あっ、今度はましかも)


そして、片手はソマの肩に置きもう片手は頭の上にのせた。そして、ポンポンとソマの頭を叩きはじめた。  




(あー。ほしかったけど、違うのよね)


「なんだよ。また、違うのか?」


「違うけど、ありがとう。気持ちはとてもうれしいわ」ソマはちっともうれしくなかったが、フォローする。


「なんだよ。その、気持ちっていうのは意味が分からん」




「‥‥」話を切り替えて、もうそろそろ帰ろうとソマは考えていた。




「じゃあ、それとは違うかもしれないが」


「えっ、あ、あの」急にリンネに抱きつかれたソマは戸惑った。


「子供の頃アマンが、よくこうしてくれたんだ」そういうと


ソマの背中にまわした手は、やさしく撫でていた。


「よく頑張ったよ」と低い声でやさしく、リンネはささやいた。


突き放そうとしたソマの手が止まった。


そして、目からは涙が滲んでいた。




「どうした」少し身体を離すとリンネは、私の顔を見つめた。


「痛かったのか⁈」まじかで見る顔は、人間にしか見えなかった。あたたかな体温といい、皮膚の弱らかさといい。その眼差しは人間の若い男性そのものだ。


「い、痛くない‥です。ただ、そのぉ。うれしかったの」はにかみながら、ソマは答えた。




「そ、そうか。じゃあ、まだこうしていよう」リンネは正直、自分の気持ちにとまどっていた。ただこうしていると昔アマンに抱きしめられた時と同じ、幸せな気持ちになっていくのがわかった。自分にはない心音や呼吸音も心地よかった。




どれくらい、こうしていただろう?




『すっー、すっー』んん、違和感をおぼえたリンネは、ソマの身体を再び少し離す。


「な、なんだ。寝ているのか?まったく、せわしい娘だなあ」やれやれといったふうに、それでもなぜか笑みがでていた。


(さてと、ここで寝かせてもいいんだがベットまで運ぶか。あっ、あれ、確か‥)リンネは昔同じことがあったことを思いだした。メモリをフル稼働して、それを探した。


(ああ、これだ)何万ものメモリの中から、探りあてた。そう。その記憶の映像は、酔っぱらって帰ってきたアマンを抱っこして寝室に連れて行ったシーンだった。


『これが、もしかしてお姫様だっこか?』独り言をいいながら立ち上がり、ソマの身体の肩の後方に片方の腕を潜り込ませてもう片方を両ひざの後ろに潜り込ませてソマをそっと持ち上げる。そして豪華なエントレスを移動した。



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