オマケ⑤ 初代ネズミ取り曹長

__一七九四年一二月二四日、ポーツマス港


その日の港の夜は一段と凍りつくような寒さと雪が潮風の冷たさに拍車を掛け、人々の心も同じように寒々としたものだと思われた。


降誕祭クリスマスおめでとう!」

俺は右手に並々と注がれたグロッグ酒のジョッキを高々と掲げ、そう言って艦長室に座る仲間の面々と乾杯を交わす。


「こんな御時世なのに、わざわざこんなご馳走用意してくれるなんて、ウチの艦長は太っ腹で有り難いね。」

主計長のアーサーはそう言うと、一飲みでグロッグを飲み干し、目の前の巨大な七面鳥にかぶりついた。


「知り合いの伝手でたまたま安く手に入っただけだ。毎年こんな良いのが食べれると思うなよ。」

俺は浮かれるアーサーに念を押すと、自分も七面鳥にナイフを入れた。


__宴会後の真夜中


「やっぱり寒いものは寒いなぁ……ふう。」

俺は用を足しに甲板に上がり、物陰でこっそりズボンを下ろした。

無論、艦長室にもトイレ──もとい、穴つき個室は存在するが、あそこは現在の波の高さと風向きからすると、モロに海水を被ってしまうので、現在は使えない。


「こういう所は、戦列艦であった方が楽なのに」

俺は思わずそう呟いた。


「よしよし良い子ですね〜、ちょっと待っててくださいね、今宴会の残りをあげますから──あれ、チキンは嫌いでしたっけ?」

俺がもう一度寒さに身震いしてから艦長室に戻ろうと体の向きを変えたその時、誰かの声がした。どうも当人は小声で話しているらしいが、案外近いところで何やら渡しているらしく、俺のいる物陰からは丸聞こえだった。


「あー……そこにいるのは誰だ?」

俺は恐る恐る身を屈めて声のする方へ足を踏み出した。


「ひゃあっ!?」

数フィート先の樽や箱の小さな山を覆い隠した帆布の中で蠢く何かに声をかけると、帆布に隠れていた声の主は飛び上がり、その正体を露わにした。


「そ、ソフィー?そんなところで一体何してるんだ?」

普段から特に波風立てることもなく、職務や士官候補生としての立場に前向きなソフィーが俺に隠れて怪しい作業をしていたことに、俺は心底驚いた。


「か、艦長!?あ、あの、えーとぉ………」

ソフィーはあからさまに目を泳がせて口籠もる。


「ニャー」

その瞬間、ソフィーが飛び上がった拍子に捲られた帆布から出てきたのは、小さな子猫だった。


「あっ……」


「ゴロゴロ……」

子猫はソフィーに甘えるように足の周りを八の字に回って喉を鳴らした。

その姿が月明かりに照らされると、薄灰色の短い体毛や満月の中に一筋の太刀を入れたかの様な丸い両眼、そして先ほどソフィーがあげたのであろう、七面鳥の切れ端を齧った姿などが良く見れた。


「ソフィー、これは……?」

俺は二、三歩ソフィーに近づいて尋ねた。


「ご、ご紹介します。サリーです………」

ソフィーは子猫を俺によく見えるよう、抱き抱えて見せた。子猫はまだ冷めた七面鳥の丸焼きの切れ端を一生懸命齧っていた。


「な、なるほど?まあ聞きたいことは色々あるが、取り合えず艦長室へ行こう。話はそれからだ。」

俺は無理やり納得して、艦長室の方を指差した。


「は、はい!」

一旦は叱られ無かったことに安堵したのか、ソフィーは少しばかり元気を取り戻して返事をした。


__艦長室


「それで……まあ、ことの経緯から説明してもらおうか。」

俺はとりあえず自分のハンモックにかかっていた毛布を軽く丸めて簡易的なベッドを作り、そこにサリーを寝かせた。


「はい、艦長。サリーを見つけたのは一昨日の朝のことでした。艦長の命令で艦長の知り合いの方に七面鳥をいただきに行った帰り道で、路地裏でうずくまっているサリーを見つけました。近くにはサリーの兄弟もいましたが……残念ながら。」

ソフィーはその時のことを思い出してしまったのか、涙ぐんで話した。


「なるほど、それで居ても立っても居られず、保護したと?」

俺は、中々口に出せずにいたソフィーの言葉を拾った。


「え、ええ……艦長に無断でこのような事をしたのは重罪だとはわかってます!でも──でも、私にはこの娘を見捨てる事もできなかったんです!」

ソフィーは語気を強め、俺を説得しようと試みる。──が、俺の心は初めから決まっていた。


「そんなの、言うまでもない。」

俺は厳しくそう言った。ソフィーはそう言われた瞬間、衝撃と悲しみが同時に訪れたような表情で、只々唖然とするだけだった。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!良いに決まってるってつもりだったんだが。」

俺はソフィーの悲しむ顔を見て、慌ててそう付け加えた。


「ほ、本当ですか!?」

ソフィーは先ほどとは打って変わって、この世の全ての幸福をかき集めたかのような笑顔に変わった。


「ああ。ただし、いくつかの条件をきちんと守れるならの話だが。」


「なんです?」


「サリーがうちの船乗り猫になるなら、キチンとそれらしくせねばならん。よって、サリーの世話係兼指導役として、キチンと面倒を見ること。良いな?」

俺は笑って条件を話した。


「お任せください!」


「ニャ!」

ソフィーが自信たっぷりにそうページをすると、サリーもそれに呼応してか、元気よく鳴いた。


______________________________________


 最近帆船系の神ゲーに出会ってしまいました。

 何一つ学べない作家ことhi9h1and3rsでございます!

 長くは語りませんが、どうか作品継続の為を思って、ご評価の程よろしくお願いいたします!

 訂正、応援コメント、何でもください!

『いいな』と思ったらレビュー、☆、フォローなど何卒よろしくお願いします!


 次回 ご報告(※ただのタイトルです) お楽しみに!

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