はなさないで欲しい雪女

水曜

第1話

むかしむかし、寒い北国に雪女がいました。

外から自分の家に戻ったら、年老いた男と若い男が休んでいました。ひどい吹雪だったので避難してきたのでしょう。


吹雪と一緒に雪女は小屋に入ってき、年老いた男の方を見ました。すると、吹雪の寒さで年老いた男は凍死していました。このまま、ここに留まっていたら若い男の方も危ないでしょう。


しかし、掟で人間を助けることは禁じられています。

そこで雪女は一芝居打つことにしました。既に事切れていた年老いた男に白い息を吹きかけます。すると相手はみるみる凍り付いていきました。


傍目からは雪女が年老いた男を殺したように見えるでしょう。

次に雪女は若い男のところに来て、言いました。


「まだ若いからお前は見逃してあげる。だけど、今日のことは決して誰にも話さないで」


若い男は何度も頷いて命からがら逃げていきました。

それを見届けた雪女は年老いた男を丁寧に埋葬してやりました。


けれども、雪女は本当に若い男が他言しないかだんだん不安になってきました。

もし噂が広がって掟を破ったことが仲間にばれるようなことになれば大きな罰を受けることになります。


そして、雪の夜、今度は若い男の元へ雪女が向かいました。

人間の振りをして「お雪」と名乗り、しばらく泊めてくれないかと頼みます。


一日のつもりが二日、二日のつもりが三日、一週間、一月、二月、半年と雪女の滞在は延びていきました。若い男は約束通り雪女のことを誰にも話していないようでした。


若い男は人間の振りをした雪女とともに過ごすうちに、雪女に好意を持つようになりました。雪女の方も若い男の正直で親切なところに惹かれていきました。


やがて、二人は結ばれて夫婦となります。

五人の子供にも恵まれ毎日楽しく暮らしました。この幸福を手放したくないと雪女は強く願い、夫となった男に言いました。


「ねえ、あなた。私のこと絶対に離さないで」


その日、気を良くした夫は酒を飲み……過去に体験した不思議な出来事を妻に語ってしまいました。


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はなさないで欲しい雪女 水曜 @MARUDOKA

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