Rotten flower

第1話

「手が疲れてきてるんだけど…」

「多分あとちょっとだから離さないで…」

足下には数十メートル、落ちれば最悪死、最善でも骨折するような崖で俺は死にかけている。何しろ足を滑らせたのが運の尽きであろう。でも、三人で来ていて良かった。手を繋ぎながらなんとか耐えている状態で神崎が山岳救助隊に助けを求めていた。

「あと五分ほどで着くらしいぞ。」

あと五分、か。一秒一秒がとても長く感じる。

「一つ、お前を救う上で重要な話がある。話さないで最後まで話を聴いてほしい。」

「わかった。」


俺、水月とお前、秋野と出会ったときの話でもしよう。あれは高校の部活動のときだった。確かバスケ部だったな。お前は注目の的でそれに対し俺は脇役、月とスッポンほどの差だったとよ。

俺もお前にすごい憧れを持っていた。どれだけの練習を積んできたんだろうな。俺にはきっとわからないだろう。神崎だってそうだっただろう。

あぁ、俺だってお前に憧れていた。二人と同じバスケ部ではなかったが、かっこよく見える水月は生きている次元が違うように感じた。でも、その後だ。お前は俺等に対し一生忘れられないような罪を犯した。


俺は覚えていた。彼らに対して犯して、でも彼らには何も咎められなかったことを。

「なぁ、俺等の彼女を取ったのは誰だ。なぁ。お前だろう。秋野。顔がいいし、運動神経抜群。こんな人材百年に一人だろうな。」

「顔はいいが、中身は最悪なこと俺等は知ってるからな。お前は人をパシらせすぎた、こき使いすぎた。お前はこの山にこんな高い崖があることを知っていたか。お前はこの山で毎年のように滑落事故が起こっていることを知っていたか。お前はこの山について何か知ろうとしたか。何もしなかった。」


俺の口はいつの間にか動いていた。

「それは違


命乞いなんてものはいらない。俺等のお前への恨みは消えない。僕らの苦しみは一瞬によって消えた。彼は耳に電話を当てているだけ、特に電話もしていない。

「さぁ、俺等はどうする。」

「表世界には降りれない。事故にでも見立てて死んでしまおうか。」

「俺等の人生を無茶苦茶にしたのは彼だし、彼の人生を無茶苦茶にしたのは僕らだ。」

僕らは抱き合うと軽い口づけをし、そのまま崖から落ちていった。

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