空が暗くなるまで

道草

テラリウム

 二人だけの薄暗い教室で、貴方はいっぱいに手足を伸ばした。薄く伸びた影が教室の壁にかかって、シルエットが揺れた。

「ね、明日二人で学校サボらない?」

 私はイエスでもノーでもなく、「何をするの?」と聞いた。

「どこか遠くて高いとこに行こうと思ってさ」

「なに、星にでもなるわけ?」

「違うよ、星を見に行くんだよ」

「星なら放課後に見れるじゃん」

「違う違う。何も分かってないな、君は」

 貴方はわざとらしく「やれやれ」というポーズをとった。私は少しむっとしながら「じゃあ何を」と言った。

「黄昏時に見るのさ。それも見晴らしのいいとこでね」

「それならここでいいじゃん。もう陽も落ちるころだし」

「いやだ。学校の窓から見る星だなんて」

 貴方は「監獄から空を見上げるようなものでしょ」と言った。それがなんだか可笑しくて、つい笑ってしまった。

「監獄というより箱庭じゃないかな」

 四角に切り取られた空は、瞬く間に色濃くなっていった。

「まあ、ここは静かだし、そう悪くもないよ」

 私は窓を開けた。

「あ。あれ、しし座だよ」

「あれのどこが『しし』なんだ」

 そう言って貴方は、首を傾げながら星を指でなぞった。

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