僕は、勇者? 余は、魔王?

ころこね

第1話 最終決戦

「よしっ、やっと辿り着いた」

「あぁ、勇者来ちゃったよ」

オールバックの背の高い男、魔王が背の低い少年勇者とと睨みあっていた。     

しばらく、無言が続く。

「…」

「…」

耐えられなくなった魔王が、手を広げ低い声で言う。                  

「クックック…勇者よよくここに辿り着いた。褒めてやろう。さぁ、始めよう」

少年は冷たいた声で返す。

「それは、僕のセリフだ」

「ねぇ!?早く、攻撃してくれない?」

「何を?魔王が先に攻撃してくれない?」

(おい、なんで勇者なかなか攻撃してこないんだ?普通なら、『魔王覚悟しろー!』とか威勢よく飛びかかってくるだろ。なんだ?あの目、輝きがないというか…)

(なんで、魔王攻撃してこないの?まさか、 僕がしようと思っていることに気づいて?…でも…)

「チッ…勇者に見せてやろう。仲間の悲惨な姿を!」

魔王は、手を広げスクリーンに現在の各地の様子を映す。

そこには、魔王直属の四天王と互角に殺りあう勇者一行がいた。しかも、城を壊しながら。       

「…」

「…」

「勇者よ、あんな者達に怯えずに殺りあおう」

「分かった」

「早くしてよ、攻撃」

「勇者からしろよ!普通、勇者からだろ!」

睨み合う。

「はぁー」

(あの手が使えないなんて)

勇者が大きなため息をつく。

「はぁー」

(本当になんで攻撃してこないんだろ)

釣られるように、魔王もため息をつく。

勇者は目を伏せ、剣に手を掛ける。

スゥー…息を吸い、走る。

魔王に向け、剣を振る。が、

カランッッ…魔王の顔手前で剣が落ちた。

で叫ぶ。

「無理だ!やっぱ、怖い!血、見るの」

(くそっ、とっさだったからこんな事しか言えなかった)

「えーーー!??えっ!?何?血を見るのが怖いって!?今まで‥えっ?勇者どうやってなったの?」

魔王は、勇者に近寄りしゃがむ。

勇者は、魔王をじっと見る。

(‥やっぱり魔王とは思えない色合いの魔光。黒が少ない。もしかして、この魔王…偽物?でも、ここは魔王城だし…。…この人は一体なにものなんだろう?‥知りたい。知りたい!)

「僕、元々勇者じゃなかったんだ。勇者一行の雑用係だったんだ。でも、ある日…勇者様が病気にかかってしまって…そのまま、ぽっくり…」

じわっ〜〜と勇者の目から涙が溢れ出でくる。

(この子、勇者じゃなかったの?どうしよう。やりづらいな)

魔王は優しく頭を撫でる。

(優しい、丁寧な撫でかただ。あの人に似ている)

チラッ‥その時、勇者の目に母の姿が見えた。

「魔王、ねえ魔王は本当の魔王?」 

「な、な、ななななんのことだ?」

言葉が震えている。

(分かりやすいぐらい、動揺している)

「僕、魔王のこと知りたい。だから、」

「だから?」 

「僕と一緒に旅にいかない?」

(?なに?)

「…どういうことだ?」

「魔王のことを知りたい」

剣を拾い、元の位置に戻す。

「知ってどうするんだ?」

「みんなに、魔王はいい人って知らせる。だから、お願い。魔王」

勇者は頭を下げる。

「駄目…かな?」

上目遣いをする。

(‥あざとい。正直に俺は旅に行きたい。けどな、四天王がなにを言うか)

(やっぱり無理かな…。そうだよね、急に知りたいと言ったら驚くよね〜)

((うーん…))

二人は、頭を悩ませる。

その時、スクリーンに映っていた勇者一行と四天王が全員集まっていた。なにか、話している。

(あいつら、まさかここに来るつもりなのか?)

「勇者、余は‥旅に出るぞ」

「えっ?いいの?なんで?」

「ここだけの話だかな、余はな実は闘うことが嫌いなのだ。本当は君と闘いたくはない。」

(絶対、あの勇者一行と四天王が来たらこの部屋は絶対、血まみれになる。絶対に)

「じゃ、行こう。魔王」

「あぁ、だかその前に行きたいところがある。行ってもいいか?」

「うん」

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