コンチェルト&ハーモニー

那須茄子

コンチェルト

第1話

 私はいつものように、図書館の隅の静かな場所で本を読んでいた。


 学校では目立たない「陰キャラ」として知られている私。

 とにかく、人目を引かずに過ごすことには安心感を覚えている。


 

 そんな私でも、今日はいつもと違った。


 なぜなら、彼女が私の隣に座ったからだ。



 彼女──それは「陽キャラ」の代名詞、音乃施おとのせさん。

 クラスの中心でいつも明るく、誰とでも仲良くできる子。


 音乃施さんが私の隣に座り、話しかけてきた時、私の心臓は少し早鐘を打った。



「ねぇ、暗野くらのちゃん。いつも一人で読書してるけど、何読んでるの?」



 音乃施さんの声はいつも通り明るく、私の静かな世界に溶け込んでいく。


 私は少し緊張しながらも答える。



「あ、えっと。これはファンタジー小説だよ。面白いから、読んでみる?」



 私の声は小さく、でも心の中では、音乃施さんとの再会に内心喜んでいた。

 


 実は。

 私と音乃施さん、幼稚園からの幼馴染みなのだ。


 


 音乃施さんはキラキラした目で本を受け取り、一緒に読み始めた。

 

 そこから話は弾み、昔話に花を咲かせた。



 笑い声が図書館に響く。

 私の心は、久しぶりに温かい感情で満たされていった。



 私は、音乃施さんのことが好きだった。

 

 音乃施さんには、好きな人がいるらしい。



 だから、何も言わないでおく。





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