第5話 親友との別れ
その日は、ホテルから会社に向かうと、職場で、芽衣がにやにやして近づいてきたの。そして、ランチに誘われた。
「今日は、昨日と同じ服じゃない。お泊り? やっと、瑠華にもそういう人ができたんだ。今度、会わせてよ。4人で一緒にデートしようよ。」
「いえ、まだ、そういうことできる関係じゃないし。」
「恥ずかしがらないでさ。どういう人なの。」
「あの、最近、出会った人で、まだ、よく分からない。」
「それでもお泊りでしょう。瑠華、本当に気に入ったのね。よかったじゃん。」
「うん、なんか一緒に暮らせるイメージができて・・・。」
「いずれにしても、お祝いね。また、その人のこと聞かせてね。」
私は、罪悪感でいっぱいだった。でも、芽衣のことを見ていると、この人に彼は渡したくないという気持ちでいっぱいになり、私と竜也のことを知らないなら、勝てるかもなんて思い始めていた。
芽衣は、いつものとおり笑顔でいっぱいだった。私は、その顔をみて、親友をだまそうとしている。本当に、私は汚れてしまった。
でも、もう、私の体が竜也が欲しいと言っていて抑えられない。そして、竜也と1夜を過ごした以上、もう前に戻ることはできない。
どうしたら、彼を奪うことができるんだろう。私のけがれた心は、そんなことを考え始めていた。きっと、私の目は女狐のように釣りあがっていたんだと思う。
まず、私達のことを知らないうちに、芽衣が浮気をしたということにしたら、いいんじゃないかしら。そしたら、それに嫌気をさした竜也が私と付き合うということもありえるし。
そう考えたら、私の足は、もう動き始めていて、ホストクラブの前にいたの。そして、ホストに芽衣を追い落とす提案をしてみた。
ホストクラブって、華やかで、あんなに男性から積極的にちやほやしてくれる所だなんて知らなかった。でも、手を出してくる感じもなく、安心して男性と話せる所だって感じたわ。
私からは、20万円だすから、ある女性を口説いてくれないかと提案した。そしたら、20万円なんて端金で、そんなことできないよと笑われてしまったわ。
でも、別に、悪いことをしろというんじゃないのよ、芽衣は裕福な家庭で、お金持ちだから、そのまま、あなたのお客にすればいいのって言った。
また、私からのお金は端金でも、お客にしてからお金儲けもできていいじゃないと言うと、そうだねって乗り気になったみたい。
そして、その1週間後、夜道で芽衣が会社から駅に向かう途中で、ヤクザ風の男性2人が芽衣に絡んできて、それを、あのホストがサラリーマン風の服装で助けたの。そして、その3日後に偶然、その近辺で出会うふりをして、一緒に飲みに行こうと誘った。
芽衣は、助けられたこともあり、その誘いに断りにくかったみたい。まあ、1回ぐらいならという雰囲気で、一緒に飲みに行ったように見えた。
もちろん、私は、後ろから写真を撮っておいた。そして、ホストは、お酒に眠り薬を入れたのか、寝てしまった芽衣をホテルに連れ込んだ。これも写真にばっちり撮ってある。
私は、匿名で、竜也に、この写真を送っておいたの。
「私、どうしよう。騙されたみたいで、男性にホテルに連れ込まれて、その写真を撮られて、竜也に送られちゃった。竜也、とっても怒って、別れるって。全く、そんな記憶なくて、たぶん、お酒に睡眠薬とか入れられたんだと思う。」
「それは大変ね。でも、そこまでいくと、どうしょうもないんじゃない。だって、ホテルに彼女が男性と一緒に泊まったなんて聞いたら、誰でも怒るでしょう。」
「でも、私が騙されたのに。」
「もっと、慎重にすべきだったんだと思う。知らない男性に着いていくなんて、ありえないし。」
「瑠華、今日は冷たいんじゃない。なにかいい方法を一緒に考えてよ。」
「私が言いたいのは、もう、ここまで来るとダメだと思うということ。諦めるしかないわよ。」
「そんな。」
思ったより計画通りに進んだことに、心の中では笑いが込み上げていた。そして、芽衣がホテルに行ってから2週間ぐらいたったころに、竜也と同棲生活を始めることにしたの。
竜也は、私のことを、いつも強く抱きしめてくれた。本当に、幸せな時間だった。このまま、ずっと、私のことを抱いていて欲しい。
こんなに好きな男性に抱きしめられているって安心でき、幸せな気持ちになれるなんて知らなかった。
ある晩、竜也と一緒に寝ていると、玄関が開く音がした。なんだろうと思って起き上がると芽衣が呆然と立っていたの。
「瑠華、どういうことなの? 竜也とどんな関係なの?」
「竜也が芽衣と別れて寂しいときに、私と一緒に飲みにいくようになって、意気投合して今は一緒に暮らしているの。芽衣が、あんなことするから、こうなっちゃったのよ。」
「だからといって、親友の男性とそんな関係にならないでしょう。竜也も、どうして、瑠華と一緒なのよ。もしかしたら、2人で私を陥れたの?」
「そんなことはない。お前が俺を裏切ったんじゃないか。」
「そんなことはない。あれは、私が騙されたのよ。全く記憶がないし。あれから1ヶ月しか経っていないでしょう。こんなに早く、同棲なんてするはずがない。2人とも、私を騙していたのね。」
芽衣は、怒りが爆発したのか、テーブルの上にあるガラスのコップとか投げつけ、大騒ぎになってしまった。そして、包丁を取り出し、竜也の腕を切りつけた。
芽衣の顔つきは、目がつり上がり、口からは悲鳴があがり、髪を振り乱して、私が知っている穏やかで笑顔いっぱいの芽衣じゃなかったわ。
こんな姿に変えてしまったのは私だと心が傷ついた。あんなに仲の良い、親友だったのに。
近隣の方から警察に連絡が行き、芽衣は連行されていった。私たちも、事情聴取と言われて警察に連れて行かれた。
警察では、私は、芽衣は竜也の元カノだったけど、別の男性とホテルに行くところを写真に撮られて、それが竜也にバレて別れてしまった、その後、私たちは付き合い、今夜、芽衣が怒鳴り込んできたと話した。
警察も、竜也の証言とも全く同じだし、芽衣もほとんど同じことを言っているので、芽衣は警察に留置され、私たちは、解放されたわ。
さっきまで心を痛めていたのに、これで敵はいなくなったと心の中で笑っていた自分に再び驚いた。
もう、私は竜也なしでは生きられない。竜也の子供を産むの。最初に出会った時に、そう思ったんだから。竜也との仲を邪魔する人は許さない。
ただ、女友達よりも竜也が欲しかったという欲望が勝っただけだもの。
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