第4話 逃走劇
外への扉までたどり着くとそこにはレイノルド様がいてこちらを見ていました。
「アゼリア嬢。外までご一緒しましょう」
そうして手を差し伸べてくれたので私は手を取り一緒に広間を出ました。
お互い無言で歩いていました。
「レイノルド様は……」
「ん?」
レイノルド様にこれからどうなさるのかと尋ねようとしたところ、何故かレイノルド様は私の前に出て歩みを止めた。
危うくぶつかりそうになったのでどうしたのかと前を見るといつの間にか、ローブを来た人達が前を塞いでいました。
遠くからはガチャガチャとして金属音の擦れる音とあっちだという声が聞こえてきました。
ーーえ? 何が?
ローブを着た人達は王宮魔法使いの方々でした。アゼリアは光魔法の持ち主なのでお話をすることもあったのでそのローブで分かりました。
彼らは王宮で主に魔法の研究をされています。
魔法は七段階まであるとされていますが、今は魔王も討伐されて久しく激しい戦闘も少なくなったので、五段階が使える最高となっていた。
昔の高位魔法使いは七段階まで使えていたそうです。
火や風は攻撃魔法として、水は癒やし、土は防御魔法という特徴があります。
確か国王陛下やリーダイ王子は火の魔法を使えますが、戦闘をしたこともないのでやはり一段階のファイアという火を指先に灯すくらいしか使えません。
私も光魔法の一段階のライトという光を灯す魔法だけです。
それでもこうして一国の王や王子として君臨できるみたいです。
それと光と闇は精神をも司ると言われ滅多に現れず、研究もかなり遅れています。
現に私もこの国では百年ぶりぐらいと言われていますけれど、光魔法は一段階のままです。だって鍛錬なんてしてないもの。
「魔法なしは死ね!」
魔法使いがそう言うと皆が詠唱を始めました。
「大いなる風の力よ。我は願いたまう。風の力を我に、与えたまえ。悪しきものを捉えるために風よ縄となりその体を緊く縛……」
すると私達の頭上に風の縄のようなものが現れた。
何々? どうなるの?!
動揺する私にレイノルド様が、
「走れますか?」
「え、あ、きゃあ」
レイノルド様は返事を待たず私を軽々と抱き上げると、とても人一人を抱えて走る速度ではない速さで駆け出していた。
速い。とても人間の走る速さではないと思う。
私は抱えられたまま、後ろを見遣るといつの間にか風の縄は消えていた。
そこには狼狽している魔法使い達だけが見えた。
「馬鹿な! 詠唱が打ち消されたぞ!」
私を抱えたまま走り去るレイノルド様。
そこへ、甲冑を着た騎士達も現れた。
どうして、騎士達が?!
「逃げたぞ! 追えぇ!」
「どうやら、あなたを巻き込んでしまったようですね」
レイノルド様は私にそう話しかけてきたけど息を切らしている様子もなかった。
そして、ガチャガチャと派手な音がして、見遣るとなんと鎧がバラバラになっていた。
「なんだこりゃ?!」
「よ、鎧がバラバラに?」
「剣まで!」
口々に叫ぶ騎士達は鎧や剣が繋目からバラバラになったので慌てふためき、私達を追うことを断念したようだった。
レイノルド様は見る間に追手達を引き離していった。
時折魔法のようなものが飛んできていたが、それこそ魔法のように私達に当たる前に消えていた。
魔法を打ち消す魔法など聞いたことがない。だけどそれはまるで魔法のようだった。
「怖いだろうが申し訳ない。だけど君の安全は俺が保証する」
「は、はい。ありがとうございます」
私がそう言うとレイノルド様はほっとした様子だった。
「――追放される王子を生かして王宮から出すことなどありえないからね」
ぼそりと呟いた言葉に何だか悲しい響きが含んでいる気がした。
掛ける言葉もなく、舌も噛みそうだしと思いながら黙ってレイノルド様にしがみつくしかなかった。
少しでもレイノルド様の憂いが晴れれば良いのにと思いながら。
だけど発動した魔法を消したのはレイノルド様なのは分かっていた。
それは私が目覚めた時に気がついた力で解ってしまったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます