7:登場人物について (4)
◆音戸雁枝(おとどかりえ)
怪異・
戦国時代に人間から吸血女となり、かつては国内でも最強の一角を担うと言われた大物怪異。
吸血によって作り出した眷属を従え、複数の使い魔を使役して思いのままに権力を誇った時期もあった。また何度か結婚している。
しかし明治期以降は独り身で、怪異という種族全体が権勢を弱めていくのを察し、生き血を
猫又コマにミケを託され、思わぬ形で余生を長引かせる事となる。
コマの肉体を譲り受けたため、猫の姿でも人の姿でもミケとよく似ている。猫形態はミケより白毛が多く、赤毛と黒毛の部分は小さく淡い。パステルカラー風の模様が可愛らしい雰囲気。
人間形態時はショートカットの少女で、紺のワンピースか和服を好んで着ている。幸いミケと違って、裸になる癖はない。
吸血鬼・吸血女の能力は全怪異の中でも高く、不死身の肉体を持ち腕力体力で他種族を圧倒するのは勿論、飛行、変身、催眠、探知など様々な異能を行使する。
ただし長年生き血を断ってきた現在の雁枝からはかつての力のほとんどが失われ、今も得意とするのは催眠、結界術、怪異治癒術など、呪文詠唱で補えるいくつかの異能のみである。
ちなみに彼女の唱える呪文は人間が合法的に使う方術とは系統が異なり、人が使うとなると大きな代償を払う事になる邪法術の
怪異となって以降身についたもう一つの力は『
根岸を含めて今までに四体、殯の異能を持つ怪異と会ったと語る。そのうち一体は
趣味は旅行。
世界各地を渡り歩き、観光パンフレットやよく分からない土産物を買ってきたりする。
見知らぬ土地が好きな割には偏食家な一面もあり、特に野菜は苦手なものが多い。
ニンニクは食べても平気だが、味が嫌いらしい。
好きな食べ物は鶏手羽大根煮と魚の煮つけ。
家事全般が壊滅的に苦手で、使い魔や眷属がいた頃は彼らに任せていた。
終戦後、ミケと音戸邸で二人暮らしになり、当初は怪異といってもほぼただの子猫だった彼のために家事をこなそうとしたのだが、「このままでは家が破壊される」と判断したミケが一念発起して早々に炊事も掃除も覚えてしまった。
結果として生きる気力を取り戻せたのだからミケは良かったと考えているが、雁枝は多少落ち込んだという。
【製作小話】
短編版では諭一という名前の男性吸血鬼だったキャラクター。
性格も現在より大分気弱でうっかり者、生活力は皆無という人物像でした。
長編版で女性にして書くにあたって、まず最初に『殯の魔女』というサブタイトルを思いつき、そこからの連想で設定などを構築していきました。
実は殯の魔女ではなく『
偏食家だとか家事が苦手といった一面はこの初期案の名残です。
本編内だと要所にしか登場しないため、あまりそういった面は見せませんが、過去編である『秋の初風、石のおと』で多少垣間見られたかと思います。
◇◇◇
◆瑞鳶(ずいえん)
怪異・妖怪天狗/推定400歳/身長175cm/東京都八王子市(旧
高尾山および周辺の山林の怪異を統べる大天狗。
外見上は初老の男性で、がっしりした印象。目つきが鋭く、瞳に
ロマンスグレーの髪を長めに伸ばし、洋装の時は後頭部でくくり山伏装束の時は下ろす。ここ百年ほどは口髭を生やしている。
オペラ役者のようなバリトンボイスが特徴。
全体に男前なので、400歳を超えた現在でも割とモテる。
バイクいじりの他、茶道からバリスタの真似事まで多岐にわたる趣味を持つ凝り性。ただし最近ハマったばかりのコーヒーブレンドは、同じくコーヒー好きの根岸いわくあまり美味しくないらしい。
江戸に幕府が開かれたのと同時期、三体の同胞と共に高尾山に隠れ里を築いて、開拓が進み怪異の暮らしづらくなった山林から天狗達を呼び寄せた。
この時幕府側と相互不可侵の密約を結んだため、徳川家康と直接対面した事もあるという。
里の創始者の大天狗らのうち、瑞鳶の親友にして兄弟分だった
江戸期に関東を放浪してそのまま住み着いた雁枝とは、一度対立し決闘するに至っているが、引き分けののち和解し友人となった。
東京大空襲の後、深川の
能力は山風使い。高尾山頂から風の吹き降ろす範囲の全てを見通す強力な千里眼をを使いこなす。
また、天狗の里を守る結界は元々四人がかりで張り巡らせたものだが、現在その維持は瑞鳶のみが担っている。
里の天狗達から慕われる
【製作小話】
序盤から名前だけは出ていたキャラクター。本格登場は第二部からとなりました。
実年齢は400歳と事前に決まっていましたが、外見を90歳くらいの老人にするか40歳前後の働き盛りにするか、もしくは鳥型にするかでかなり迷いました。結局60代くらいという中間どころに落ち着いています。
師匠枠という事で、もっと最強っぽいキャラにしても良かったかもしれませんが、この作品全体を通したテーマの一つに「世代交代」があるため、雁枝も瑞鳶もあまり絶対的な強者にはせず、道を譲らざるを得なくなっていく人々、というポジションに置きました。
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