10. 初仕事
翌朝、まだ薄暗い街の中を走り、エクスプローラーズギルドで依頼票を受け取り青果ギルドへと向かった。
眠りから覚めきっていない街をすり抜け、青果ギルドに到着すると、青果ギルドはすでに活気に満ちあふれている。
市場や青果物店の人たちってこんな早くから仕事を始めるんだ。
農家も朝早かったけど、ここまでではなかったな。
「ん? あんた、何者だ?」
私が青果ギルドの入り口から中を覗き込んでいると、警備員みたいな人に見つかってしまった。
まあ、中を覗き込む人なんて怪しさ爆発だよね。
私はエクスプローラーズギルドから来たことを話し、ギルドでもらった依頼票も見せる。
これで私がエクスプローラーだと信じてもらえたらしい。
「嬢ちゃんみたいな若い娘がエクスプローラーとはな。運ぶ荷物は結構あるが大丈夫か?」
「はい。ピックアップワゴンで来ていますので」
「こんな依頼、ピックアップワゴンを使うまでもないだろう。まあ、お前さんがそれを使うというなら構わないが」
そりゃあ、そうだよね。
魔導車の消耗を考えたら普通はピックアップワゴンなんて高級品を使わないか。
でも、私はお婆ちゃんの魔導車を有効活用するために使わせてもらおう。
さてまずは……あの服を着ている人たちかな?
「すみません、エクスプローラーズギルドから来た者ですが」
「お嬢ちゃんが? 確かに、普段エクスプローラーズギルドに依頼を出していて断られ続けてきたが、お嬢ちゃんみたいな子供が来たのか?」
「あはは……これでもエクスプローラーズギルドの一員ですよ。これが初仕事ですけど」
「ふうん。街の外にも行かず、小遣い稼ぎができるこの仕事を回されたってことか。よし、買付は終わってる。お嬢ちゃんはどうやって運ぶんだ?」
「私の魔導車があります。それの荷台に載せて運べば大丈夫です」
「魔導車持ちか。道理でその若さなのにエクスプローラーになれるはずだ」
「ええと、この中まで魔導車で乗りつけても大丈夫なんでしょうか?」
「そこの門衛に言ってゲートを開けてもらえ。そうすれば魔導車ごと中に入れる」
「わかりました。ちょっと行ってきますね」
私は指示されたとおり門衛さんにゲートを開けてもらい、ワイルドアンクレットに乗って戻ってきた。
先ほどの男の人は突然入ってきたワイルドアンクレットにびっくりしているみたいだね。
「これがお嬢ちゃんの愛車か。高かったんじゃないのか?」
「ええと、お婆ちゃんの形見なので、値段まではちょっと」
「なるほど、大事に使えよ。それじゃ、買った物を積み込むか。嬢ちゃんは待っていてくれ」
「あ、私も手伝います」
「それは契約違反だ。エクスプローラーズギルドに出している依頼は運搬のみ。積み下ろしは自分たちが自分たちの責任で行うことになっている。まあ、そのまま待っていてくれ」
どうも契約は細かいところまで定められているらしい。
積み込みまでは荷主の責任だが、運搬中の事故は基本的にエクスプローラーの責任となる。
ただし、荷主に重大な瑕疵があった場合はその限りではないらしい。
うん、責任重大だ。
「よし、積み終わったぞ。あとは俺の店まで案内するだけだな」
「はい。よろしくお願いします」
「おう。ところでベルトとかはないのか? このままじゃ走ってる途中で荷物が動くぞ?」
「あ、ベルトでしたら……えい!」
私は魔導具を発動させて荷物をベルトでしっかりと固定した。
載せられた荷物を分析し、しっかり固定するロープを張る魔導具まで搭載されているんだよね。
便利だな、この魔道車。
「はー、便利なもんだ。それじゃ、案内するぜ」
「はい。よろしくお願いします」
私はおじさんの案内で街の中を走り抜け、おじさんの店まで到着した。
荷物の積み下ろしはおじさんと店の従業員が手分けして行い、数分で終わらせてしまう。
さすが、早いな。
あとは依頼票に完了のサインをもらって終わりなんだけど、ここでおじさんがなにか考え込んでしまった。
どうしたんだろう?
「お嬢ちゃん、明日からも配送作業を行うのか?」
「しばらくはそうなると思います。まだ、信頼度も足りていませんし、外の仕事を受けたことがないので、エクスプローラーズギルドもそうそう新しい依頼は任せてくれないかと」
「わかった。明日からもよろしく頼むぜ」
「はい! ありがとうございます!」
よし、報酬ゲット!
大銀貨2枚だけど、これでも十分な成果だ。
この調子でほかの依頼もこなしていこう!
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