8. エクスプローラーズギルド
ワイルドアンクレットが手に入ったあと、数日間はお爺ちゃんの指示で街の周りを走り続けることになった。
これは私が運転に慣れることと、ワイルドアンクレットに搭載されている簡易マップの見方を学ぶためらしい。
ワイルドアンクレットに搭載されているサポートシステムの機能のひとつに『マップ表示』がある。
これはセントラルシステムから取得したマップを車内に搭載されているパネルへと表示する機能だ。
これによって大体の地形や道、街の場所が把握可能だ。
このシステムのさらにすごいところは、エアドローンで観測した場所の地図も記録してくれることである。
例えば、セントラルシステムから取得したマップでは通れることになっていた道をドローンで調査した結果、崖崩れなどで通れなくなっていたらその情報もマップに記載してくれる。
標準マップでは街と街道周辺しかマップがないので、この機能は本当に便利だ。
あと、もうひとつ便利な機能は『水深測定機』である。
これを使うと周囲の水場の深さを表示してくれる。
フロントガラスにも深さを可視化したバーを表示してくれるので、浅瀬などを探して渡るのに便利だ。
これらの機能を駆使して私はエレメントの街の周囲を走り回った。
おかげで日帰りできる範囲の地図は大体完成したと思う。
もちろん、モンスターがいそうな場所には近づかないので、そこは除くけどね。
地図が完成したことをお爺ちゃんに報告すると、お爺ちゃんが実際にその地図を確認しに来た。
そして、地図が確かに完成してることを確認すると、行く場所があるというのでそこに案内してもらうことに。
どうやら、これから先、私の暮らしに大きく関わる場所だというけれど、どんな場所だろう?
やっぱり冒険者ギルドだろうか?
冒険者ギルドというのは、魔物退治や薬草の採取などを主な活動とする……まあ、簡単に言うと何でも屋だ。
簡単な審査で誰でもなれて腕っ節があればある程度の稼ぎは得ることができるので、それなりに人気の職業である。
私が暮らしていた村からも一攫千金を夢見て冒険者になると言い残し、村を出ていった人たちがいたが、その後はどうなったかわからない。
誰でもなれる代わりに命の保証もない、そんな仕事だ。
私もその一員になるのかと考え、お爺ちゃんの運転に任せて街を進んでいくと、冒険者ギルドとは別のギルドに着いた。
表に広々とした駐車スペースがあり、外見もきれいに整備されている。
ここはどこだろう?
「着いたぞ。ここが今日からお主の働く場所になる『エクスプローラーズギルド』じゃ」
「『エクスプローラーズギルド』?」
「まあ、なんじゃ。詳しい説明はギルドの係員にでも聞くとよい。では、いくぞ」
駐車スペースにワイルドアンクレットを止め、私はお爺ちゃんと一緒にエクスプローラーズギルドという場所の中へと入って行く。
ギルドの中はきれいに整頓されており、受付などもなんというか品がある。
冒険者ギルドってあまりこぎれいな印象はなかったんだけど、エクスプローラーズギルドは違うのかな?
「いらっしゃいませ。本日はエクスプローラーズギルドにどのようなご用件でしょう?」
「うむ。孫をエクスプローラーズギルドに登録するために来た。案内してもらえるか?」
「……失礼ですが、お孫様はどのようなことができるのでしょうか? エクスプローラーズギルドは『探検家』の集まるギルド、なんの特技もない少女が来るような場所ではありません」
うわ、受付のおじさんの言葉が冷たい。
やっぱり、冒険者ギルドとは違う場所のようだ。
でも、お爺ちゃんはなんでこちらを選んだんだろう?
「魔導車の運転免許を持っておる。愛車はGZ-5000シリーズの『GZ-5172 Type-W ワイルドアンクレット』じゃ。つい最近オーバーホールしてもらったばかりじゃし、街中を走り回っているので噂には聞いておるじゃろう?」
「確かに、若いお嬢さんがGZ-5000シリーズと思われる車に乗っているところを何人もの会員が目撃しております。この方がそうだと?」
「表を見てきても構わんよ。ついでに孫を連れて行って生体認証によるエンジンスタートができるかも確認してくるとよい」
「そこまでおっしゃるのであれば。お嬢さん、お名前は?」
「はい、ルリといいます」
「では、ルリ様。一緒に来てください」
そのあと、私は受付のおじさんと一緒にワイルドアンクレットまで戻り、生体認証キーによるエンジンスタートを行った。
生体認証キーによるエンジンスタートとは、あらかじめ魔導車に魔力パターンを登録しておくことでシステムキーなしでもエンジンをかけられるようになる仕組みだ。
この魔導車も修理が終わったあと生体認証ができるようになったので、私とお爺ちゃんを登録しておいた。
ちなみに、システムキーは私がネックレスにかけて肌身離さず持っている。
エンジンスタートを確認した受付のおじさんは、私に向かって恭しくお辞儀をしてくれた。
そんな大げさなことでもないのに。
「失礼いたしました。まさか、本当にワイルドアンクレットの所有者だったとは」
「いえ、気にしないでください。本当は私なんかが持てるほど安い魔導車じゃないみたいですし、お婆ちゃんの形見を使っているだけですから」
「……お婆さまの形見?」
受付のおじさんが私の言葉に鋭く反応した。
どうしたんだろう?
「失礼、お婆さまの名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「はい。メノウですが……」
「メノウ様のお孫様でしたか! これは飛んだご無礼を」
うん?
お婆ちゃんの孫だとなにかあるんだろうか。
というか、お婆ちゃんってエクスプローラーズギルドの関係者?
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