転生先は未来!?

AN@RCHY

第1話

 意識が覚醒する……


 すると途端に激しい頭痛が俺を襲い、その場でのたうち回る。床は冷たく俺の体温を奪っていく。それでも立ち上がることは出来なかった。


 どれくらい続いたか分からないが、やっと頭痛が収まり、状況を理解することができた。


 どれだけ暴れまわってものたうち回っても、誰も声をかけてくれなかったのは、俺が孤児だからだろう。


 思い出せる記憶をたどっても、両親の顔を思い出すことは出来なかった。物心ついた時から俺は孤児だったようだ。


 だったようだ……というのも、俺の中には2つの記憶が存在しているからだ。


 1つ目は、この孤児の体の持ち主……リュウと名乗っているモノの記憶。2つ目は、2040年にブラック企業で働いていた……名前は思い出せないが、もうすぐ30歳になる人物の記憶だ。仮にアルファとしておこう。


 頭痛がしていたのは、リュウの頭の中にアルファの記憶が流れ込んだことによるものだったようだ。


 あくまでも予想でしかないが、アルファの記憶はリュウには無かったので、頭痛でのたうち回っている間にナニカがあったのだろう。


 リュウにアルファの記憶が流れ込んだせいで混乱している自分がいるが、現状を確認していく必要がある。


 孤児……そうだ! 俺は孤児で、周りには信用できる人間などいない。日々生きるのにも苦労しているが、セーフティーネットであるスラムへの食料配給のおかげで、どうにか生きていけている状況だ。


 管理情報では……俺の歳は13歳らしいが、俺は小さすぎるのではないだろうか? ん? 管理情報?


 アルファの知らない言葉が出てきて首をかしげるが、リュウの記憶から情報を引き出した。


 管理情報とは、マイナンバーカードの進化系とでも呼ぶべきシステムだろう。生まれた時に自動的に割り振られ、偽証が不可能な個人情報を示すものだ。


 どこで生まれても割り振られる物らしく、情報端末でシステムへアクセスすると参照ができるらしい。どういう原理かは分からないが、全員に割り振られるものだとか。


 140cmもない自分の体、手足も平均より細いと思われる。成長期に栄養が取れず、発達不良なのかもしれないな……


 西暦は正確には分からないが、リュウの知識を元にすれば、俺が住んでいた時代の約1000年後らしい。


 この時代では一般常識のようで、思い出そうとすれば色々な情報が思い出せた。


 かつての地球とは違い、荒廃した土地が多く、モンスターと言われる異形の生物が跋扈している世界……原因となったのは、主人公が転生した約300年前に地球に降ってきた隕石のようだ。


 地球外生命体が内包されていた隕石は、地球にクレーターを作る前に壊されたが、地球外生命体はシリコン生命体であり、ナノ単位の群体だったため全滅を逃れた。


 潜伏したシリコン生命体が地球の生物や機械を取り込みモンスターへ変貌し増殖した結果、地球上の生物は危機的状況に追い込まれた。


 個人でも対抗できる兵器を開発している数年で人口は10分の1以下となり、人が住めなくなった場所は荒廃していったようだ。


 クソッタレなブラック企業から解放されたかと思えば、クソッタレな世界に放り込まれている。


 救いのない状況で、スラムで殺されて死ぬか、街から斡旋される死ぬ可能性の高い仕事で死ぬか、このまま野垂れ死ぬか……景気の良い話はなさそうだ。


 スラムの人間が金を稼ぐためには、ハンターになるか、徒党を組みスラムで金を集めるしかない。徒党に入れば斡旋される仕事よりは安全だが、死が近い状況に変わりはない。


 ハンターとは、300年前の世界……旧世界の遺物を回収したり、モンスターを殺し素材を剥ぎ取り売ることで生計を立てている者たちの総称だ。


 ハンターになるには、最低限モンスターを狩れる銃器が必要だが、孤児でスラムの人間であるリュウには遥か高嶺の武器だ。


 徒党を組むにしても信用できる人間はおらず、人数が少なければすぐ排除されてしまう……


 転生かどうかは分からないが、もっといい状況の人間に転生させてくれよ……


 どれくらい呆然としていたか分からないが、配給の合図である鐘が聞こえてきた。


 俺のアジトと呼ぶには微妙な場所だが、入りにくいこの場所は俺の安らぎの場ではある。


 配給場所へ行くと、いつものようにスラムの人間が長蛇の列を作っていた。最後尾に並び、30分ほどで配給を受け取れた。


 取られる前にアジトへ戻る。落ち着いたところで、配給された味のないブロックバーを食べる。


 食事は配給でしか手に入らないが、水は無料で手に入れられる。旧世界のシステムのおかげか、水には苦労しないようだ。そのおかげでスラムの人間も極端に不衛生という事はない。


 ただ生きるだけなら、この世界は恵まれているのかもしれない。


 まぁ、18歳を過ぎ成人した後、納税できないと街から斡旋された仕事をする必要があるので、期間限定といったところか。


 ブロックバーを食べていると、急に視界の端に警告の文字が現れる。


(ん? この警告ってなんだ?)


 リュウの記憶にない警告が視界に現れ混乱する。


 警告だとして、何に対しての警告なんだ?


 混乱する頭を叩きながら考える。あたりを見渡すと、手に持っているブロックバーに赤いマークがついている。


 どういう原理で視界に警告や赤いマークが付いているのだろうか?


 だが、俺(アルファ)には何となく心当たりがあり、思い出してきた。


 2040年には一般的だった情報端末の画面に似ていたのだ。ゴーグル型ディスプレイで、リアルタイムで色々教えてくれる機械の機能の一部だ。


 それに似ている。


 となれば、今食べているこれは何かしら危険があるのだろう……だからと言って、他に食べ物はない。


 ここ数年は同じ物を食べているから、これを食べたからといってすぐ死ぬことはないだろう。


 俺は危険より食べることを優先し、空腹を満たしていく。




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