いつまではなさないでいるの?

かなたろー

いつまではなさないでいるの?

 我が家には子供がいない。多分、子供はもうできない。

 だが、我が家には愛娘まなむすめがいる。


 3月10日に11歳の誕生日を迎えた愛娘まなむすめがいる。


 名前を「ハッサク」と言う。


 男らしい名前だ。


 愛娘まなむすめなのだが、つまりはメスなのだが、名前を「ハッサク」と言う。


 男らしい名前だ。


 愛娘まなむすめは犬だ。犬種はフレンチブルドッグだ。

 愛娘まなむすめは犬なので、犬が好きな遊びはひととおり嗜むのだけれもど、なかでも引っ張りっこが大好きだ。


 晩御飯を食べたご褒美に、おやつのチュールを堪能すると、おもちゃ箱をひっくり返して、お気に入りのおもちゃを取り出してくる。


 タマゴ型で、押すと「プゥプゥ」と音が鳴る300円くらいのおもちゃで、愛娘まなむすめ一番のお気に入りだ。


 壊れるたびに再度購入をしていて、今はもう三代目。3月10日に誕生日プレゼントとして購入をした。


 愛娘まなむすめは、白いタマゴ型ボールをくわえると、コタツに入っている私の肘におもちゃをグイグイと押し付けてくる。


「プゥ、プゥ」

「ブゥ、ブゥ」


 おもちゃの音と、愛娘まなむすめの鼻息が、絶妙のアンサンブルを奏でている。

 私は膝に当たっているタマゴのおもちゃの柔らかな弾力と、愛娘まなむすめの鼻息が当たるのを感じながらおもちゃを奪い取ると、リビングの隅へとなげる。


 愛娘まなむすめは、堰を切ったように猛烈にダッシュをすると、不規則に跳ねるタマゴのおもちゃを前足でがっしりとつかまえて、噛み付くとスキップしながら戻ってくる。


 私は、ふたたびタマゴのおもちゃを投げようとするも、愛娘まなむすめは、「ガルルルル……」と唸り声をあげながら、絶対おもちゃをはなそうとしない。はなさないで引っ張りっこを楽しむのだ。


 今年でもう11歳。人間の年齢で言うと60歳過ぎの還暦越えだ。

 慢性的な低タンパク症を患っている愛娘まなむすめは、今年の夏、食欲が一気に落ち込んで、10.4キロあった体重も7.2キロまで減ってしまい、佐村河内さんのゴーストライターを務めていた新垣さんみたいな顔になっていた。


 最近、どうにか食欲を取り戻し、体重も8.4キロまで復調した。

 毎回、KACには愛娘まなむすめの近況エッセイを綴っているのだけれども、あと何回書くことができるだろうか。


 日々を大切に生きていきたい。

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