第3話 ヒロイン忍者の決意 (シノブ1)

「私はあの婚約を許さない」


 部屋の中で一人、女は角隠しを脱ぎ捨て叫んだ。


「あの御方は騙されている」


 女は振袖を脱ぎながら自らの言葉に頷く。


「そうでなければこの私を選ばないはずがない」


 裸となった女は両手をあげ天井を見上げながら宣言する


「私こそが妃となる女だ」


 掲げられた両の拳は強く握られその掌は確信をも掴んでいた。


 そしてもうそれを手離しはしない。


「あの性悪女はあの御方に妖術を掛けたに違いない。外道めが!」


 下着をつけながら女は吐き捨てる。


「そうでなければなあの女が選ばれるはずがない」


 下着と素肌の上に帷子を重ねながら言う。


「私があんな女に負けるはずがない」


 女は夜と同じの闇色の衣装に身を纏う。


「ああ哀れな貴方様……どうかお待ちください」


 口紅を手に取った女は唇に朱を走らせた後、口当てでそれを隠した。


「貴方様をお救い致します」


 決心しながら女は窓へ向かって駆けだしそのまま跳び、窓の外に広がる夜へと飛び込む。


「私があの化け物を退治する」


 女は忍者であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る