自信と覚悟 エピソード1 出合い

鈴木 優

第1話

     自信と覚悟

               鈴木 優 

  エピソード1 出会い          

 

 自信とは

 人間が自らの能力、知識、信念など、信頼している精神の状態を意味する。

 。

 覚悟とは

 危険なこと、不利なこと、困難なことを予想して、それを受けとめる心構えをすること。

 

 北海道の小さな田舎町 いつもの光景が始まる

 今は、無人駅となっているが当時の駅 改札には駅員が居て、それなりの人達が利用していた

 通勤、通学の時間が重なるからだろう 朝の便は特にだ

 その日は、昨夜の夜更かしが祟りギリギリだったと言う事もあって違う車両に乗る羽目になった

 改札は通らず、ホームを走り四両目 いつもは六両目の入り口付近

 田舎の駅なのでホームも短い 七両編成の中程しかホームにかからない

 高校に通うようになった毎日の様子だ 三ヶ月位すると乗車する人の顔が、その車両毎にだいたい同じ事に気づく

 でもこの日は少し違っていた

 入り口付近で新聞を読む公務員風のオッさん ヤンチャ風な高校生 それに小学三年生からの仲間達

 学生の間でも暗黙のルールで車両によって柄が違っていた 特に後ろ二両へは、普通の人達は敢えて乗らない通称『不良車両』なる物が存在していた

 その日は、居心地が悪く、周りからも浮いていたのも確かである 変わった物でも見るような視線

 自分でもわかっている事だ 普通より長い制服に太いズボン その車両ではとても違和感のある風体 空気が違う! だが移動しようにも動きずらい位の混雑、人だらけ

『あ〜鬱陶しいな』ふと後ろを振り向くと見覚えのある顔が 確か...

 "あの子"だ〜 

 ここに乗っていなかったら"あの子"に出会う事もなかったはずだ

『あの子』とは、小学校の三年生迄同じクラスに居た子 幼稚園から同じクラスで、いつも明るく少し小さかった子

 確か、名前は酒井明美だったと思う 皆んなからは、『あーちゃん』と呼ばれていた 実家が写真館をやっていて、割と裕福な家庭だったと思う

 制服からすると、確かあの高校? 私立の女子校なのは直ぐにわかった

『地元の高校には行かなかったんだ〜』

 ふとあの頃の事が蘇る 

 席替えで斜め後ろになって少し嬉しかった事、運動会のフォークダンスで、あの子との順番が来てドキドキした事

 いつもニコニコしていて人気もあり、とても可愛かった子

 少し雰囲気は変わって見えていたが、"あーちゃん"に間違いない!

 間違えるはずが無かった

 子供、特に五歳位の男の子とは色々と知恵みたいのがついて来る 特に同年代の女の子には妙に素直になれず、気持ちが反目になる事も

 わざと邪魔をして泣かせてしまったり、変に避けてみたり

 それに感情?が加わると余計にだ 

 家が近いと言う事もあり、帰ってからの遊び場もだいたい同じだった

 ある日、急な雨で"あーちゃん"が公園の隅で困っている姿があった 

 俺は何故か急いで家に戻り、傘を片手に"あーちゃん"の元へ そうしないとダメだ! 俺が助けよう そう思えた 

『優君 ありがとう』 今でも忘れない

 "あーちゃん"の声 少し赤いホッペ 冷たかった手 今でも忘れない 


『俺の事なんか覚えてないだろうな〜』

 

 思えば不思議な日だ 寝坊しなかったら、この車両に乗っていなかったら? 

 そう思いながら終着駅迄の二十分間 混み合っている列車に揺られていた

 いつもと変わらない憂鬱な一日の始まりのはずだった

 

 

 


 

 

 

 

 

 

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