第2話 雑談兼探索配信
見てくれるリスナーさんが増えた為、俺のテンションが高揚しており、探索のスピードが上昇する。しかし、ハイレベルの戦闘という訳では無いので、カメラが捉えられるように動いているのだが。
今俺が居るのは125階層、探索者ランクにてBランクに上がる最後の難問と呼ばれている階層だ。125階層の脅威点は、この階層を棲家としているワイヴァーン。俺のような化け物の視点から見れば、攻撃、防御、俊敏、全てが高いとは言えないこの階層のワイヴァーンは下位も下位だ。しかしBランクに上がる前の中途半端な強さを持った人間には危険だと言えるだろう。
「おっ、大体ワイヴァーンの数は1000かな?此処までとなると、誰か巣を刺激したっぽいな」
・ちょいちょい、1000体も相手できんの?
・強いのは分かるが、流石にあの量は危険すぎだろ
・主、引く事も大事やぞ
・それは分ってるやろ。だから探索者特別免許を取れた訳で
ううむ、心配してくれるのは有り難いが、無用なんだよな。あれくらい無傷で倒せなくては土御門家の当主交代になってしまう。ただでさえ、弟や妹、従兄弟、従姉妹が優秀過ぎるというのに。
霊力によって発生した札を周囲にばら撒き、空中へと固定させる。固定されている札は青き光の文字で輝いており、光弾を今にも発射しようとしていた。
「行け」
そう命令をすれば、溜まりに溜まっていた光弾が次から次へと発射される。翼の付け根に当たり、ワイヴァーンの赤き翼がもがれる。頭に当たれば頭部が弾ける。しかし、それでもワイヴァーン達は向かってくる。……おかしい、このワイヴァーン達何かを怖がっている?まるで一刻も早く逃げたいような動きだ。仲間が殺されても関係無い、と言わせるような。
何故、何故だ。ワイヴァーンは本来仲間を尊ぶ者。仲間が一人でも多く生き残る選択をする者。それが、どうして。
「あのワイヴァーン達、普通じゃない……怯えているのか?何かに」
・何を言うとるんや、この主
・群を作る魔物が仲間が死ぬ事を恐れないなんて当たり前やろうが。探索者特別免許は偽造やったんか
・言っとくが、目の節穴はお前らだぞ
・は?何を言ってんねん
・ワイヴァーンは仲間を尊ぶ魔物だ……此奴等、尊んでいるのか?
「その通りです。ワイヴァーンは魔物の中でトップクラスに仲間を尊ぶ者。だからおかしい、だからあり得ないんですよ。ありえる可能性としては二つ。一つは何者かが魔法、スキルで操っている事。二つは自身よりも圧倒的に強い強者に恐怖しているか、その二つです」
まあ、今考えても分かんない事だからな。これはさっさと終わらせるに限る。一枚、赤く光り輝く文字が刻まれてある札を取り出せば、青く光り輝く文字が刻まれてある札の光弾は空中で止まる。陰陽で赤い札を上空に転移させれば、赤色の爆発が生じ、続いて青色の爆発が発生する。
「よし、終わり。それでは魔石を回収しに行きますね」
・何でそんなに身体能力高いん?
魔石を拾っている光景を見せるのは飽きるだろう、という事で質問コーナーを開催していた。その質問コーナーで目に止まったのが、このコメントである。
うむ、何とも答えにくい質問であるな。……本当にこれはなんて伝えれば良いのだろうか。俺の身体能力は後天的、つまり特級呪物である十二霊神を取り込んだ事による身体能力上昇なのだ。だからこそ、伝えるのが難しいのだ。
「俺の場合は……難しいですね。説明するのは。先天的な才能が必要とも言えるし、後天的な運命が必要とも言えます。申し訳ありませんが、全ては言えません。まあまあの国家機密情報なんで」
・あの札とかって?
「あれは陰陽師が得意としている霊力を利用した陰陽術ですね。使えない陰陽術は基本的には無いんですけど、適している、適してないはあります。……あ、一つ人によっては使えない陰陽術はありました。厳密には使えるんですけど、霊力が足りないと代償として自分の命を使うんですよ。それは陰陽神道って呼ばれています」
俺は元々、一般の陰陽師が百集まったとしても及ばない莫大な霊力量と出力。それに加えて、十二霊神が体内に存在する事でのバフ。それも一では無く、十二もある事で気軽に陰陽神道を放てはするのだが、気軽に放って良いものではない。精神に放つからが実に影響は無いが、現実に撃てば極めて大変な事になるだろう。
霊神に対抗する為に生み出したとは言え、流石にあの陰陽術は無いだろう。
・陰陽師って平安時代とかの?
「まあ、そうですね。厳密に言えば平安時代よりも前にはあるのですけど……陰陽師が日常に溶け込んだのが平安時代ですからね。鎌倉時代から陰陽師は段々と少なくなりましたが、今でも陰陽師は居ますよ。数も質も下がってるけど」
平和になった、と言えば平和になったのだろう。平安時代のあの頃は妖怪が蔓延り、多くの陰陽師の命が絶たれた。妖怪での絶望で言えば平安時代が一番多いだろう。狩っても狩っても目の前に溢れる妖怪達。平和な未来など一切見えない程に暗闇に包まれた世界。それに自ら命を絶った者も居た。
(だからこそ、ししょーみたいな人が輝いて見えるんだろうな)
師匠の事を思い出しながら魔石を拾っていれば、落ちていた魔石は全て無くなっていた。
「そろそろ、終わりにしますね。多分、数日後にはまた配信をしますよ。それでは」
・楽しみにしてるぞ、主
・全裸待機してるからな
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