第二部
第ハ章 軌跡
◯月星暦一五二四年九月〜月星暦一五六〇年六月二日〈略暦〉
竜護星第六十二代国主、レイナ・ヴォレ・アシェレスは月星暦一五ニ四年九月、セルヴァと、地方領主の次男シレノスの第三子として誕生した。
イルベスとケイネスという七歳離れた双子の兄がおり、大層可愛がられていたという。
幼い頃は好奇心旺盛な少女で、街に繰り出しては護衛と追いかけっ子なんてことは日常茶飯事。
「また姫様が」と街の人からも微笑ましくみられていた。
幼馴染のハイネを連れ出しては、立入禁止と言われていた樹海探索をするような娘だったから、少々お転婆と言い換えても良い。
【月星暦一五三六年ニ月】
月星の内戦が終結したという話が竜護星にも伝わって来た。たった十五歳の少年が終わらせたという話は吟遊詩人が謡い、劇の題材にされ、レイナも知ることなる。
その頃からか、レイナは盛んに月星へ行きたいとねだるようになった。しかし、長い間正式な国交も無く、内戦直後で不安定な国に行かせられるわけがない。
当然大人達は反対するが、行動力の塊のようなレイナはまだ十一歳という年齢にも関わらず、竜に乗って単身月星に向かってしまった。
月星歴一五三六年六月のことであった。
同月、レイナは月星の白の砂漠上空を抜けようとして、竜の激しい拒絶により、竜諸共落下(※1)。記憶喪失となるも、直後、白の砂漠を訪れていた月星のアトラス王子に保護されることになった(※2)。記録によれば、前王がセルヴァから受けた恩に応えるため、レイナを保護するようにとアトラスは命を受けていたとある。(※3)
レイナが記憶を喪っていた為、故郷探しの旅は以降五年に及ぶこととなった。
【月星暦一五四一年七月】
辿りついた竜護星では、ケイネスがイルベスとセルヴァを弑逆し、王を自称していた。
レイナはレオニスを名乗るケイネスに名を呼ばれることで記憶を取り戻し、アトラスや機を伺っていたモース・コル・ブライト、ライ・ド・ネルトの助力によりレオニスを打倒する。
翌、月月星暦一五四一年八月、レイナは国主として即位した。
アトラスは竜護星に留まり、モースの指示の元、国の立て直しに助力した。
【月星暦一五四二年七月】
月星から使者が来訪し、竜護星国主は月の大祭への招待を受けた。同時にアトラスは帰国が決まり、レイナが送り届けることになる。
【月星暦一五四二年十月】
月の大祭初参加し、その宴にてアトラスと婚約が決まる。アトラスからの求婚であった。
【月星暦一五四三年四月】
月星にてアトラスと挙式。
翌月、竜護星でも婚礼を行い、アトラスは竜護星に居を移した。
但し、タビスという特殊な神職に身を置くアトラスは国籍を月星に残したままの婚姻となり、その立場は月星王の弟という立場故に月星の王位継承権を保持したままである。
【月星暦一五四四年七月】
レイナは男女の双子出産。
姉はマイヤ、弟はウェスペルと名付けられた。
【月星暦一五五〇年】
ウェスペル王子を事故で亡くす。享年六歳だった。
皮肉にも、この事故によって、マイヤ王女には巫覡適正があることが確認された。
【月星暦一五五八年十一月】
レイナ、進行性の病を発病。
【月星暦一五六〇年六月二日】
レイナ、卒去。
享年三十六歳だった。
――――――――――――――
(※1実際はユリウスによる操作によると推測される)
(※2出奔中に出遭ったユリウスによる指示)
(※3実際はアウルムとの協議による辻褄合わせ)
――――――――――――
いきなりの展開です。
初期プロットからあった展開とはいえ、実際は文字にすると感情移入しちゃって泣きながら書きました。
レイナの経緯が気になったら、1タップ(クリック)の励みをぜひ。
お読みいただきありがとうございます。
八章宜しくお願いします。
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