六・五章 琥珀の契約
■月星歴一五四三年四月①〈陸路〉
月星アンバルの王立セレス神殿聖堂で婚礼式が執り行われた翌日。
上質な生地であつらえられた旅装に身を包んだ
月星南部にある港街リメールまでは馬車を使う。アンバルからは半日程の距離である。
普段、どこに行くにも竜で飛ぶ身では、街の中だけならまだしも、街道を馬車で走るのは這って行くような感覚でもどかしい。
まだ馬の背に直接乗って走る方が良い、尻が痛いとぼやくアトラス。
最初は竜の、地面に足が付かない感覚に恐怖したものだが、慣れとは恐ろしい。
※※※
リメールは、月星にいくつかある港町の中でも一番規模が大きな街である。
行き交う船も大型船が多く、月星屈指の貿易港でもある。
波止場には竜護星の旗印を掲げた船が一行を待っていた。
船長は二ル・ド・ネルト・ファルタン。現ファタル領主の弟である。海路全般はファルタンの一族が担う。
アトラスの引越荷物など、今回は荷物が多い。時間短縮の為、何台かは馬を外した馬車ごと船倉に詰め込まれた。
竜護星の婚礼にも出席したいから同行するとアリアンナが言い出した。
アリアンナが動くと、単身でもやたら荷が多くなる。今回は荷が積めないからと断ったら、自身で足を調達して別船で付いてきている。
月星側の正式な見届け役としては、国王の従兄弟であり右腕のネウルスが同行し、ヴァルムが付随している。
ヴァルムは、月星至上主義のネウルスの失言を懸念して、アウルムがお目付け役として同行させた。
アトラスの護衛兼従者として、サンクは竜護星に付いて行くことになった。テネルの推薦と、本人の強い要望、月星に身寄りが居ないことが決め手になった。
神殿側も城側も、もっと多くの人員を付けたがったのだが、アトラスが拒んだ。
アトラスは自身に関わることで人生が左右される人間が出ることを極端に嫌う。
この半年の間、側付きをしていたプロト少年は付いて行くと最後までごねたが、彼はまだ年若い。神官として神殿で学ぶこともまだまだ多いだろうと説き伏せた。
大祭の時など、戻って来た時に気心が知れた人間が居てくれた方が嬉しいと伝えたら、しぶしぶながらに納得した次第である。
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六.五章イメージ画
(アトラスとレイナ)
https://kakuyomu.jp/users/Epi_largeHill/news/16818093079998170222
【人物紹介】
https://kakuyomu.jp/works/16818093076585311687/episodes/16818093078876074057
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