□月星暦一五四一年七月⑱〈幻?〉

□ハイネ

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 ハイネは目的の部屋がいやに明るいのを見て取り、歩みを早めた。


 溢れているのが自然光では無いのは一目瞭然。ランプの灯りでは無いのは確かな銀色の光。


「誰かいるのか?」

 入室したハイネは、寝台の傍らに立つ一人の青年を見た。


 初めて見る男だ。

 青銀の髪の人物が医局に居た覚えはない。


 男は寝台に寝ている人物に目を落としていた。


「アトラス!?」

 青ざめていた顔色に血の気が戻ってきている。

 熱も下がったのか、寝息も静かになっていた。


「彼なら、大丈夫ですよ」


 男が顔を上げた。

 青銀の髪に隠れて見えなかった瞳がハイネを見つめ、ふと微笑んだ。

 美しい紫水晶アメジストの瞳に、思わずハイネは見惚れた。


 すぐに目を覚ますだろうと言い残し、男はハイネの脇を通って部屋を出ていった。


 ハイネはしばらくそこに立ち尽くした。


 今のは誰だったのか?


 見知らぬ男のはずなのに、どこかで会ったことのあるような懐かしさを覚える。

 だが同時に、本当にいたのかという不確かさをも感じる。


「ま、待って。君は……」

 あわててハイネは追いかけるが、廊下には誰もいなかった。



【一章 登場人物紹介】

https://kakuyomu.jp/works/16818093076585311687/episodes/16818093076599827456

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