僕と彼女と冬と春

ヨキリリのソラ

プロローグ

 


 十二月一日。日記をつけ始めて、もう半年くらいが経った。あぁ、入学したての頃が懐かしい。

 高校生活エンジョイ! を意気込んではみたが、結局やりたいことは見つからず、一か月経たずに沈んでしまった。そんな自分を変えたくて…………いや、少しでも危機感を持たせたくて、怠惰と普遍の塊を文字として残したんだっけ。

 まぁ、特に危機感を抱くわけでもなく半年が過ぎ去ったけど。このままだと何も残らないよ、一応それは言っておこうかな。





 そこまで書いたところで、尖りの削れた鉛筆を置く。

平日、休日に関係なくどんな時でも書き続けられた日記を閉じて、僕はふらふらとした足取りでベッドに沈んだ。

 くるりと寝返りを打って仰向けになる。視界に映り込む白の天井はただそこにあるだけで、少し眩しい。


 あと今日は何かすることがあっただろうか。学校の課題? そんなものはない。じゃあスマホ? いじったってしょうがない。いっそのこと、もう寝てしまおうか。

 リモコンをポチポチ押すと、眩い光はシャットアウト。真っ暗な自室が睡眠を促してくる。


 まだ少しだけ、白の残る天井に腕を伸ばして手を開く。よくアニメとかでキャラクターがやってるな、これ。


 何も起こらない、何も変わらない。多少眠たくなってきただろうか。いや、気のせいだ。目はパッチリ開いている。


 せっかくだから何か考えてみようか。


 自己で満足いくような夢のハイスクールライフ、言葉だけなら響きはいいが、一切思いつかない光景だ。それだけ縁のない話ってことか。


「はぁ」


 一言、冷たげな溜め息。

 僕には別に学校生活を楽しむ権利がないわけじゃない。知らないのだ、楽しさをこの手に掴み取る方法を。この満たされない生活からの脱出方法を。


「もうこれ以上は止めよう」


 ゆっくりと目を閉じ、布団に吸い込まれていく。


「何か、ないかな?」


 日記半年記念日の最後はそんな抽象的な希望で締め括られた。




※3月23日修正しました

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