第26話 一番美しいのは、この俺だからな!

「だ、大丈夫か!?ニンジャ!!」

突然、謎のセクシーポーズを取り出すアローラとギャルの姿を見て鼻血を噴き出してニンジャがぶっ倒れた!


「……!」

コクコクと頷きながら無事をアピールするニンジャ。

ほんとにウブな奴だな。こんなんでよく今まで隠密行動を取れたものだ。


「だ、大丈夫!?ニンニン!」

心配して駆け寄るギャル。

さっきの余韻がまだ残っているのか、ただでさえ露出度が高い服装のギャルを見て再び鼻血を噴き出すニンジャ。


「フッ まるでニンジャはお前らの隙だらけの格好の犠牲者だな?」とクールに笑うナルシス。

「だ、だってえぇ〜っっ!」と半泣きでやるせない表情でバタバタするアローラ。

「なんだ?なんだ??なんかあったのか?」

と、俺の問いにアローラは事の経緯を話し出した。


******


「俺とナルシスが男好きィィッッッ!?」


「なんだそれは!?美しくないジョークだな?アローラよ」

さすがの俺たちもドン引きだわ。


「は〜…

あのよ?アローラ。

そりゃ俺たちは幼馴染だし、仲が良いとは思うよ?でも、俺はノーマルだ。ヒューマンの可愛い可愛い女の子が好きなんだよ」

「フッ 確かに俺は男も女も美しい者は好きだ。

だが、恋愛対象は別だぞ。

俺もリオンと同じく女が良い。」


「それに…

一番美しいのはこの俺だからな!」と髪をかき揚げいつものドヤ顔のナルシス。


「ほんとぉ?」とすがるような目のアローラ。

「バカな事言ってないで、さっさと宿に行くぞ?」と呆れながら俺とナルシスはカブに跨った。


「うん!行く!」と微笑みながらアローラとギャルもクロスカブに跨る。

さあ、10階層の宿までひとっ走りだ。


******


10階層「ルーク」にある宿『さくら』に到着。

カブのおにぎりBOXに鍵を閉めて、念のために盗難防止にトム爺のオオデンキウナギの結界を張っておく。こちらは魔力を使わない簡易的な結界だ。


『さくら』はニンジャの故郷であるトウヨウ風の落ち着いた宿で、ホテルというより旅館という佇まいだ。

ワフウと言われるタタミが部屋に敷き詰めてあり、ベッドではなくフトンをタタミに直接敷いて寝る。

これが最高に気持ちいいんだ。

温泉が無いのが残念だけど、料理は美味い!


俺達は俺とナルシス、トム爺の3人部屋とアローラとギャルの2人部屋に別れて手持ちの荷物を部屋に入れる。

ニンジャも同じ部屋に泊まる様に誘ったんだけど…


「拙者は隠密ゆえ、リオン達に危機が訪れない様に影から見張るでござるよ。

だって?」

と、相変わらずのアローラの通訳でニンジャは別行動の意思が伝わった。

たまには酒でも酌み交わしたいんだけどなあ。義理堅い奴だ。


まずは風呂に入って、晩めしだ!

晩めしはバイキングスタイルなので食い放題!!

ニンジャは相変わらず姿が無いが俺達は浴衣姿で席に着き、颯爽とトレーと皿を持ってそれぞれ好みの料理のあるテーブルに向かう。


「あーっもう!カボスばっかり食べてたから、お腹空いてないよ〜!

せっかく宿を料理が美味しい『さくら』にしたのに〜 

やっぱりモリオは今度あったら死刑ね!!」

どんどんアローラのモリオに対する評価が落ちる。

食い物の恨みは怖いのだ。


「フッ ダイエットには丁度良いのではないのか?アローラ」

まるで見本の様に綺麗に料理を盛り付けた皿をテーブルに運んできたナルシス。

「ひゃーっ!ナルたんのお皿、ヤバくね?美味しそー!!

リオンが盛り付けたお皿とダンチじゃん!!」と、ナルシスが盛り付けた皿にヨダレを垂らしながら目がハートになってるギャル。

「フッ 美しく盛り付ける。これこそがバイキングの醍醐味ではないか?

良かろう?ギャルの皿も盛り付けてやろう」髪をかき揚げいつものドヤ顔だ。

「えーっ!!良いの?良いのーっ⁇」と飛び跳ねるギャル。

「チェッ なんだよ!?

ちょっと俺の皿より綺麗に盛り付けたからって、いや、ちょっとじゃなくても…

料理は食えれば良いんだよ!!」

と、盛り付けた皿を自分の席に置く。

「そうだ!ここはやはりビールビール♪」とビールを取りに行く。

「やっぱり、ビールでしょ?♪」と席に着くと…


あれ?おっかしいな?

俺が運んだ料理が無いぞ?


「あれ?トム爺、俺の皿食った?」俺の前の席のトム爺に聞いてみる。

「なに?知らんぞ?ワシは今、それどころじゃないからの?」

と、でっかいカニ料理に夢中になっている。

ここ、『さくら』はトウヨウの郷土料理が上手くて有名なのだ。その中でもカニは絶品!

ただ、カニって食べるのに時間がかかって面倒くさいんだよなあ〜


「あれ〜?おっかしいなあ??」と、もう一度料理を取りに行く。


「お・い・しーッッッ!!

何コレ?マジたまんないんですけど〜♪」

「え?ほんと?

あ、ほんと!!すごい美味しー!!

盛り付け方だけでこんなに美味しく感じるなんて♡」

ギャルとアローラはナルシスの盛り付けた皿に夢中だ。

「盛り付けは料理の旨さを倍増するからな!

やはり、俺は全てが美しい!!」と新たに盛り付けた皿を持ってくるナルシス。

「ケッ! バイキングは腹一杯食ってナンボなんだよ?

あ!ソース忘れてたぜ」

と、盛り付けた皿をテーブルに置いてソースを取りに戻る。


ソースを持ってテーブルに戻ると…


ガフガフガフッッッ!!

ものすごい勢いでニンジャが俺のメシを食ってる!?


「お、お前…何やってんの!?

俺のメシ食って!!」


くっちゃくっちゃ…

ゴクッ

と、俺の皿を平らげてからアローラの耳元に囁くニンジャ。

「…

安心するでござるよ?どんだけ汚く盛り付けてあってもリオン殿の皿は美味しいでござる!!

…だって?」

と、親指を立てて満面の笑み(に見える)のニンジャ。恐る恐る通訳するアローラ。


「だ〜れの… 皿が?汚え〜んだよッッッ!!!!」

ブチ切れる俺。


その後、俺に説教されたニンジャは俺の為に盛り付けた料理の皿をテーブルに運び続けるのだった。


ただ、運ぶ皿にカニが多いのは俺に対しての反抗なのだろうか?

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