第23話 決着!魔法対決。 恋せよ乙女!!

「く…

ま、まさかこのワシが負けるとは…」


ヨロヨロと軽い火傷と全身ススだらけのウンコ君が立ちあがろうとする。

アローラのあれだけの攻撃魔法の威力でもこの程度で済んでいる。

やはりウンコ君の魔法使いレベルも高いって事か。


ガクッと崩れ落ちるウンコ君。

それをサッと手助ける者がいた。


それは意外にもライラック。


「ラ、ライラック殿!?」


「す、素晴らしい戦いだったぞ。

ウン先生…」

涙を流しながらライラックはウンコ君を支える。


「どれだけ愛していようとも届かぬ思い…悔しさ、魂の雄叫びを感じた。

負けた事に恥じる事は無い…

あなたは十分に闘った!

あなたは最高の魔法使いだ…

俺達モテない男共の誉れだ!!

俺は心の底からあなたを尊敬している。

あえてもう一度言おう…

最高である。ウン先生!!」

滝の様な涙を流しながらさっきの戦いを讃えるライラック。


「最高だったぞーッッッ!!

ウン先生はやはり俺達の先生だ!!」


「モテない男の生き様!その魂を感じた!

モテないウン先生の無念は俺達も同じだ!!」


「俺はウン先生について行くぜ!!

今度こそ、女にモテよう!

一緒に女にモテよう!!」


周りの盗賊どもがさっきの戦いに感動し、涙ながらに讃えだす。


好きな女に全く相手にされず、それどころかその女にコテンパンに叩きのめされる…

その無念さは如何に!?

や、やばい。

なんだか俺も男として泣けてきた。


隣を見ると…


「う、う、う、ウオーッッッ!!」

と号泣のナルシス。


「か、悲しいーっっ!!

だが、それも美しき男の恋心!そして男達の団結力の素晴らしさーッッッ!!

お、俺はお前達に猛烈に感動しているぞ!

そして…

ウンコ君やウンコ野郎など名前を間違えてすまなかった!

これからはキサマの事を尊敬の念を込めて呼ぼう!

モリオと!!」

大号泣のナルシス!

意外と名前をしっかり覚えていたナルシスに驚いたが、そのナルシスのセリフを聞いた途端、俺の頬にも涙が流れた。


「俺からも呼ばせてくれモリオ。

アローラには負けたが、魂のこもった闘いだった。

お前はモテない男を代表する漢の中の漢だ」

俺は涙を拭い照れ笑いを浮かべながらモリオに握手を求めた。


「リ、リオン!?…

フッ…

次は負けぬぞ?

必ずアローラさんを落として貴様たちに勝ってみせる」

と、ニヤリと俺の手を熱く握り返す。

「ああ!いつでもかかってこいよ?」


「モ、リ、オ!モ、リ、オ!モ、リ、オ!!モ、リ、オ!!」

途端に周りの盗賊達からモリオコールが沸き起こった!


それを聞いて驚くモリオとライラック。


「聞こえるか?ウン先生。

これはウン先生を讃える声だぞ?

胸を張ろう!俺も未熟だが、いつか本当の大盗賊になれる様にこれからはお互いに切磋琢磨して一流を目指そうではないか?」

「うむ。わし達の本当の戦いはこれからであるな?ライラック殿?」


そのセリフを聞いた周りからはさらに大きなモリオコールが沸き起こった!!


「か、感動だ!!

最高にビューティーフルではないか!?」号泣するナルシス。

「ああ。本当になんだか俺達の心も浄化されるっていうの?」

と鼻下を人差し指で擦り笑みを浮かべながら感動する俺。


「見事じゃ。モテない男達の魂の雄叫びを代表する様な戦い。そして熱い男達の団結力。見事じゃ。」

とトム爺も俺達の隣に並んで感動して涙ぐんでいる。


すると…


「なによ?これじゃあ私が悪者みたいじゃない?

ちょ…ちょっと酷い事言っちゃったかもだけど…

あ、あなたの魔法もすごかったよ?」


と、上を向いて少し照れながらツンデレの様にアローラが座っているモリオの側に立つ。


「ア、アローラさん。」

驚きの顔で見上げるモリオ。


「ま。まあ?好きでいられるのも悪くはないよ?

でも、タイプじゃないのは事実だし。

付き合うか?と言われたらNOなんだけどさ。

でも、あなたの魔法はすごかった。

すごかったよ?

魔法使いとしてのあなたはイケメンかもね?」

と、照れツンのアローラ。


「ふふふ。今度こそあなたを落としてみせますぞ?」


「さあ?どうかな?まずはその顔をイケメンに変えて、私に魔法で勝ったらね?」とアローラは腕を組みながらちょっとイタズラっぽく笑う。


「ハハハハ!これは手厳しい!!

次に会った時が楽しみですな?」と爽やかな笑みで返すモリオ。


な、なんて爽やかなんだ…

結構失礼な事をアローラは言ってるけど、それを打ち消すほどの爽やかさだ。


周りはモリオコールと拍手が鳴り止まない。

いつの間にかニンジャも俺達の横に並び、俺もナルシスもトム爺もニンジャも拍手と涙が止まらない。



そんな中、この状況についていけないギャルがいた。


「ちょ!? どうなってんのこれ!?

意味わかんないんですけどーッッッ!?」


「意味がわからない?」グスッ…

涙を拭いながら続ける俺。

「何言ってんだお前?

好きな女に全く相手にされず、それどころかその女にコテンパンに叩きのめされる…

モテない男が理想の女を手に入れるために、正に命を削って戦った。

全く相手にされなかったが、次こそはその愛を手に入れようと決意する…

こんなに熱く感動する事は無いぞ!?」


「はあ〜っ!?

何言ってんの!?リオン!」


「フッ まだギャルには早いのかもしれんな?

愛しき者を我が物に!と男が命をかけて戦う!この美しき漢の愛の戦いが!!」


「うむ。まさに漢の成長をも見たようじゃ。」

遠い目で語るナルシスとトム爺。


「……… 」

そして無言で拳を固く握りしめ涙するニンジャ。


「ちょっ、ちょっと!!大丈夫!?あんた達!?」


「愛し愛される者の戦い。

しかし叶わぬ恋。

応援したくならないか?男として」俺は悟るようにギャルに語った。


「いやうち女だし、

おっさんキモいし!」


やれやれ、俺のセリフもギャルには響かないようだ。


「ギャルよ」


「なに?おじいちゃん?」


「まだ、本当の恋をした事が無いようじゃな?

そんなお前にこの言葉を送ろう」


「命短し…」


「命短し…?」ゴクッ


「恋せよ乙女じゃッッッ!!」


「どっかで聞いたようなセリフーッッッ!!」

嘆くようなギャルのツッコミがフロアをこだまする中、モリオはライラックに肩を借り立ち上がる。


「さて、そろそろ行くとするか」と、モリオとライラック。

モリオはライラックに散々な目に遭っているのにまるで無二の友人のように肩を並べて微笑んでいる。


「リオン?貴様にはぁ!いつか借りを返す!!」

「だが、それは俺たちが一流になった時だ。あばよ。」


なんだかライラックも渋く決めてやがる!?


「け!いつになるんだ?早めに頼むぜ?」と親指を立てる。

それに背中で親指を立てて答えるモリオとライラック。


「次こそは俺達が勝ーつッッッ!!」

「おおーっっっっ!!!!!!」

ライラックの雄叫びと共に拳を上げ舞台からはけていく盗賊達。


その、後ろ姿に俺達は爽やかさが消えない。


ああ、あいつら良い奴らだな…


その爽やかな感情と笑顔に俺たちは包まれた。


そして

ギャルが最後に呟いた。


「みんな…

アホばっかだ… 」

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