第20話 わしが大魔法使いウン・コーモリ・モリオであーる!!

「わしが!大魔法使い!!ウン・コーモリ・モリオであーるッッッ!!」


どどーんッッッ!!と、どっかの魁た塾長の様な頭の禿げた口髭の大男がローブを下ろして叫んだ。


もし、漫画だったらそのセリフの吹き出しがギャラクテ○カマグナムになっているだろう。


「おおーッッッ!ウン先生!!」

「最強の魔術師!!ウン先生!!」

「塾長ーッッッ!!」


一気に盛り上がる盗賊達。

でも、塾長はいろいろマズイからやめなさい!!

 

「とうッッッ!!」


ステージからジャンプするとクルリと前転宙上がりをして俺達の前に着地した!

その身の軽さは本当に魔法使いらしい。

と、いうかライラックの姿とこの魔法使いの姿を見ると逆じゃね?

どう見てもライラックが魔法使いでこの大男が盗賊だろ?


スクっと立ち上がると

「お前らがリオンとその一味か?

ライラック殿から聞いておる。

盗賊どもの平和と安息を脅かし、収入源の危機をさらしておると聞いた!

貴様ら…

恥ずかしくないのかッッッ!!」


ドーンッッッ!!と激しく俺たちに啖呵を切るウン・コーモリモリモリ!!

あれ?違ったか?


「恥ずかしくないのか?とは聞き捨てならんな!?」

と、ナルシスが前に出る。


「キサマこそ大声でウンコモリオとのたまうとは公衆の面前で美しく無いぞ!!」

ドーンッッッとナルシス!!


「だ、誰が!ウンコモリオだ!!

わしの名前はウン・コーモリ・モリオだっ!!

変な所で名前を短くするなッッッ!!」

と顔を真っ赤に抗議するウンコ。


「なあ、ウンコ君。」

「ウンコではないッッッ!!」


「まあ、それは良いとして…」とアローラ。

「良くないッッッ!!」

と俺とアローラにつっこむウンコ君。


やばい!!俺の心の声も当たり前の様にウンコ君になっている。

彼の名前はウンコ君に決定だ。うん。


「ウン殿。お前さんが正義感が強いのはわかった。じゃが、盗賊の肩入れをするのは感心せんの?

人の物を盗み、簡単に人を殺し、売り払う。

お前さんがそんな奴らに義理立てする必要がどこにある?」


さすが人格者のトム爺。

その横であくびをしながら退屈そうに肘つえをついて寝転がってるギャル。


「フン! 少しは話のできる者がおる様だな。

老人!!悪いが、わしはライラックの漢気に惚れておる!!」


なに!?アイツにそんなものあったのか!?


「スーダンのかまど亭で見ず知らずのわしを助けてくれた漢気溢れる男だ!!」


なに!あいつら俺の未来の花嫁の店に出入りしているとはとんでもない奴らだ!!


『おーい!どんどんセシリーさんに対してエスカレートしてないかー?』と、

アローラの心の声が聞こえてきたが、それはそれとして続きが気になる。


「あの日、わしが支払いの時に財布が無いことに気づいて困っておった。

その時、ライラック殿が見ず知らずのわしのその支払いを立て替えてくれたのだ!」

「この世の中でなんと漢気のある行動!

しかもその時にライラック殿が代金を支払った時の財布がわしの財布に瓜二つではないか!!」

「その時に思ったのだ…

これは運命だと…

この男こそ、わしが使えるべき漢だと!!」と、涙流しながら熱く語るウンコ君だが…


ヒソヒソ「ライラックの野郎、ウンコ君から財布をギりやがったな?」


ヒソヒソ「しかもその財布でまるで自分が支払ったみたいに…最低ねー」


「おい。ウンコ!

貴様、ライラックに騙されてるぞ!

ライラックは貴様の財布からまるで自分が払ってる様に支払っているだけだ。

貴様はライラックに金を借りたんじゃない!貴様は自分で自分の支払いをしたのだ!!」


出た!相変わらずのナルシスの直球がきた!!


「な、なんだと!?」と、うろたえながらライラックを見るウンコ君。


「ふ〜…」とため息を吐きながら俺たちを憐れむ様に見渡すライラック。


「私の心の友、ウンコ・ーモリモリ・オ。

あれが奴らの手口なんだ…

俺達の友情の美談をこんな形で壊そうとする。

あの手口に俺たちはいつも困っているんだ…」と涙を拭うふりをして話すライラック。


「な、なんと…卑劣な…」


「お、おーいッ!!騙されるな!!

お前の名前も俺達より酷い所で区切られてるぞ!!」


「で、立て替えてもらった食事代はライラックに返したのだろう?」と、冷静にトム爺が聞く。

側のギャルはイビキをかきながら寝ている。


「う、うむ…

そ、それが…

ライラック殿の給料割り当てが割とシビアでの?

大きな活躍をしないと給料がもらえないのだ」


「うっわ!?最悪…

それって上手いこと言われてタダ働きさせられてるだけじゃん…」

アローラの一言と共にさすがの俺たちも全員ドン引きだ。

ギャルは寝てるけど。


「我が友、ウンコモリモリーノよ。

ああやって俺達の関係を揺さぶるのが奴らの手よ。

俺にはお前の力が必要なんだ…

わかるな?」


「オイ!!名前の区切りが違うどころかもはや違う名前になってるぞッッ!!」


「ラ、ライラック殿…」


あかん。俺の必死の抗議を聞くどころか涙を流してライラックの言葉に感動してやがる。

親から貰った自分の名前だぞ!

もっと大切にしなさいウンコ君!!


「リオン!

やはり貴様は腐った奴だ!

この大魔法使いウン・コーモリ・モリオが貴様を成敗してくれるわっ!!」


あちゃー

なんか知らんがウンコ君の正義に火がついたぞ!?


それにしても、さっきから気になる事がある。ウンコの奴は何かセリフを言うたびにこちらの方をチラチラと見ながら少し頬を赤らめてる。

なんだ?

あ、またチラリと見たぞ?


「わしの魔法を喰らえッッッ

リオンッッッ!!」と、杖を構えるウンコ!!


「ヤバイ!!ウンコ君やる気だ!!

アローラ!!頼むぞ!!」

「オッケェーイッッッ!!」

杖を構えるアローラ!


魔法には魔法だ!!

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