第8話 ギャルとニンジャ。
「呼ぶのおせーし!あんたらいつまでウチを待たせる気ィ?」
と、ヒューマンのギャルの様な女の子がズンダカズンダカ♪と薄暗く騒がしいクラブの長椅子に腰掛けている。
「もうアンタらお金貯まったんでしょーね⁉︎」
上から目線のこの小娘は、ギャル。
俺たちの仲間だ。
本名はオフィーリアという名前なんだが、ふわふわの髪の毛ロングで毛先がクルンとしてる茶髪の見た目で、メイクも喋り方もギャルなんでギャルとみんなで呼んでいる。まあ、本人もそれが気に入ってるみたいだから良いんじゃない?
以前にアローラとナルシスと3人でクラブに来た時に数人の男達に絡まれてるところを助けてから、妙に懐かれて俺達の仲間になった。
「おう!久しぶりのダンジョン最下層だぜ!!」
「お〜ッッッイイじゃんイイじゃん!!テンション爆上がり⁉︎ヤバくね⁉︎」と椅子から立ち上がり、満面の笑みだ。
ヒューマンのギャルは15、6歳ぐらいに見える小柄な女の子だが、アローラに負けず劣らずのモデル体型だ。
2人並ぶとモデルと読モが並んでる様に見える。
「キャーッッッ♡♡♡♡♡♡!!」
突然女の子達の歓声が沸き起こる。
なんだ?なんだ??
「フッ、今宵は美しきパーティナイトと洒落込もうではないか!!」
華麗なステップで踊るナルシスに群がる女の子達。
「キャーッッッッッッッッッ!!♡♡♡」
あ〜。勝手にやってくれ。
「久しぶりだけど、ナルたん変わんないねえ!ウケる!!キャハッ!!」と、ナルシスを中心にした女の子の輪の中に入っていくギャル。楽しく騒がしいモノに惹かれてくのはまるで火の中に誘われる虫のようだ。
どうでも良いがスカート短くないか⁉︎ まるで保護者の気分になる。
「ギャルは相変わらずね。まあ、そういう自由なところがギャルの良いとこだけどねー」とちょっと羨ましそうなアローラだ。
「ところで、ニンジャの方はどうだった?」と言い終わると同時に背後に何かが落ちてきた!!
シュタッ!!
「うわあああああっっ!!」
俺の背後でひざまずいている忍者装束の者がスクッと立ち上がった。
「た、頼むから普通に登場してくれないかな? いつもいつも心臓に悪い!」
心臓がバクバクだ!
突然現れたこの男(たぶん男だと思う)はトウヨウという国の隠密戦士ニンジャだ。
正体不明。年齢不詳。スラっとした体型で濃紺色の忍者の衣装を着ている。
いつもサングラスを掛けているから目元さえわからない。
ただ、衣装の頭頂部から出ているフサフサの耳からするとハーフウルフなのはわかる。
以前に、アローラとナルシスと「アグーの森」を探索してると、空腹すぎて狼用のトラバサミに仕掛けてあったエサを食べて罠にかかってるというお茶目な所を助けてから俺達の仲間になった。
ただ、困った事に…
「よう?ニンジャ。冒険に出ていない間は何してたんだ?」
「…………………」と、目を逸らす。
「久しぶりの最下層への冒険だぜ⁉︎最高だろ⁇」
「…………………」また目を逸らす。
わかったかい? 超人見知りなんだ。
無口を通り越して人見知りも通り越すぐらい無口。って、あ〜⁉︎何言ってんだ俺も⁉︎
すると、ニンジャがアローラの耳元に何か囁く。
「いつもリオンの事を見ていたってさ。」
そう、なぜかアローラには話せるんだ。そのアローラの「通訳」越しにニンジャの言葉が俺に伝わるわけ。
「そうか、そうか〜。俺の事を見てたか〜」
「て、オイィィッッッ!!いつも俺の事見てたの⁉︎お風呂の時も⁉︎トイレの時も⁉︎」
コクコクッと顔を縦に振るとなぜか頬に手を当てながら照れてる様にも見える。
「怖えーよ!!ニンジャ!なんで照れるの⁉︎お前怖えーよッッッ!!頼むからやめてよ!!」
スッと俺に向かってひざまずく。
わかったの意味なのか?その謎の行動も意味わかんねーよ!!
これからお風呂やトイレに行く時は天井から覗かれてないか確認しよう。
恐るべしトウヨウのニンジャ。トウヨウの神秘だ。
アローラの通訳によれば、ニンジャはその存在を敵にバレてはいけないから名前も素性も秘密にしている。だから言葉も使わない様にしているらしい。 いや、極度の人見知りにしか見えないんだが…
「なんで俺を見てるんだよ⁉︎やめてくれよ!!」
「………」
ヒソヒソ。
アローラの耳元に話すニンジャ。
「そうはいかない。罠に掛かった私を救ったリオンは命の恩人。我が主。主の命を守るのが忍びの道。気になさるな!! 、だってさ。」
「気にするわッ!!」
シュッと突然飛び上がったと思ったら姿が消えたニンジャ。このクラブのどこかで俺を見ているに違いない。
もう、そういうのいいから普通にいてくれ…。
********
「キャハ!キャハハハ!!サイッコォー!!キャハハハ!!」
「フッ、ギャルもなかなかやるではないか!!フハハハハ!!」
と、あっちの方でギャルとナルシスは踊りに明け暮れてる。
大音量で音楽が流れる薄暗い店内でテーブルに残された俺たちは長椅子に座って酒を飲んでいた。
「あいつらもいつまで踊ってんだ⁉︎」
「まあ、良いじゃないの?ダンジョンに入ったら今日みたいに遊べる時間も無いし。ニンジャはニンジャでリオンに恩を返したいのよ。義理堅いのよ」
「まあ、そうかもな…」グラスの酒をグイッと飲み干す。
「リオンもさー、ほんとヒューマン好きだよね〜。セシリーちゃん。
昔はエルフの彼女もいたのに。」
「昔は昔だ。エルフも嫌いじゃないよ」
「じゃあ、エルフも好きなんだ?」
「ふふふふふふっ♪」と微笑みながらカクテルを飲みだす。
「昔は昔。いろんな女の子と付き合ったけどよ。結局は同族同士が落ち着くんだよ」と、グラスに酒を注ぐ。
「ハハハっ!確かにリオンはさ、いろんな女の子と付き合ってたけど、ほとんど振られてたじゃん?♪」
「うるせ〜な〜。向こうが見る目無いんだよ?振られてやったんだよ!」
そう、確かに別れる時は振るより振られる方が多かった。いろんな種族の女の子と付き合ったが、特にエルフとは。なぜだろう?
「美味しいお酒〜♪ダンジョン冒険は楽しいけど、こういう生活はしばらくはお休みだもんね。
フーッ…もう一杯、頼もっかな♪」
と、アローラもご機嫌だ。
「フフフフ。そういえば、リオンと2人になるのって久しぶりね?」
と、酔った顔を近づけるアローラ。
「いつも一緒なのに。ね?」目がトロンとしてる。
「おい?アローラ飲み過ぎじゃね?」
「そんな事。ないよ?」なんだかいつものアローラと雰囲気が違う?顔が近い…
「ね?… 2人で違う店に行こっか?…」
唇が触れそうだ…
「バカ!!飲み過ぎだ!!」とチョップをアローラの頭に軽く当てる。
「痛い〜ッもう、何するのよっ!」
「俺は清楚で可憐な子が好きなの!お前みたいに男好きなアバズレはごめんだぜアローラ?」と、ニヤリと席から立ちあがる。
ん?
おや?
どんどん表情が変わっていくアローラ。
「な、な、な、なんですってえええぇぇッ!!!!
誰がアバズレだぁぁぁっっっ!!!!」
バァーンッ!!机を叩いて大激怒!!
「リオン!!殺すッッッ!!!!!!」
「うわああッッッ!!」
飛びかかってくるアローラをかわし、店の出口に逃げる!!
もの凄い形相のアローラが追いかけてくる!!
ヤバイ!!逃げるが勝ちだ!!
それを見つけたナルシスとギャルは大笑いだ!!
きっとどこかでニンジャもこの光景を見守ってるのだろう。
ひーッッッ助けてくれ!!
殺される!!
…でも、アローラから逃げながら笑いが止まらない。
へへへ!!
やったぜ!!ついにダンジョン冒険再開だ!!
俺はこの時を待っていた!!この最高の仲間達と最高の冒険をするんだ!!!!
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