第15話







 日本に居た頃の私は初任給で両親に温泉旅行をプレゼントした。


 そして今の私はフェルゴヴェールさんの世話になっている。


 縁もゆかりもない私を引き取ってくれたフェルゴヴェールさんに感謝の気持ちを告げたいから何かプレゼントしたいと思うのだけど・・・・・・。


 私と同じオタクの潤一だったら声優さんのコンサートに行くとか、アニメ関係のグッズが売っているショップに一緒に行くとかという感じでいいと思うけど、フェルゴヴェールさんは大公殿下。


 お金や貴金属は有り余るほど持っているし、着ている服だってデザイナーさんと相談して作って貰っているのでしょうね、多分。


 仮に既製品だとしてもシャツだけで日本円に換算したら〇十万はしそうな気がする・・・。


 それを考えたら何をプレゼントしたら喜ぶのか分からないわね。


 これも送還術に関する手掛かりがあるかも知れない図書館に入る為だという事は否定しないけど、フェルゴヴェールさんに感謝しているのも確かよ。


 で、私付きの侍女となったサキュバスのリリアンに相談してみたの。


 そしたら・・・「ナツキ様ですよ!という訳でセクシーなランジェリーを用意しますね~♡もっと早く仰って下されば念入りにマッサージをしましたのに♡」って言うのよね~。


 え?


 何でそういう話になっちゃうの?


 私はただ純粋にフェルゴヴェールさんに感謝の気持ちを告げたいから、何をプレゼントしたらいいのかを聞いただけよ?


 それをリリアンに伝えたら・・・・・・何か凄く残念な子を見るような視線を向けられたわ。


「大公様が気の毒過ぎる・・・」


 悲しそうな声で呟きながらリリアンが出て行ったわ。


 リリアンはサキュバスだからああいう答えが返って来たのかな?と思った私は、店長とニックさんに『私の面倒を見てくれているフェルゴヴェールさんに感謝の気持ちを伝えたいのだけど何をプレゼントしたらいいか?』と聞いてみたの。



「「それはもちろんナツキちゃんよ♡」」


「ナツキちゃんの魅力を引き出すナイトウェアをデザインしなくっちゃ♡」



 二人から帰って来た答えはリリアンと似たようなものだったわ。


 何で?


 どこをどう考えたらそんな答えが出てくるの?


 そう言った私を、店長達は額に手を当てながらリリアンのように物凄く残念な子を見るような目で見ていたわね・・・・・・。



 恐らく私の父よりも遥かに年上の男性の欲しい物の見当がつかない私は、初めての給料で買った日常の消耗品である羽ペンとインクをプレゼントする事にしたわ。






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