第41話 オールイン

「潰す。潰してやる。塵になるまで、砕いてやらぁ!」


リコシェが激昂して大声を上げながら、数発の大口径弾を半空に投げ上げた。回転する弾丸は金色の鈍い光を放ち、壊れたカジノの灯りの下で不吉にきらめいていた。


「やばい!」


私は慌てて身を伏せ、隠れる場所を探す間に、リコシェは腕を振りながら連続して発砲した。空中で互いにぶつかり分裂する弾丸は、対数的に増え、狭い空間内で密な火網を形成した。


冷静さを失ったリコシェの弾丸は無差別に降り注ぎ、カジノとバーのわずかに残っていた物も容赦なく破壊され、完全に粉々にされてしまった。


弾丸が私の太ももをかすめ、削られた傷から熱い痛みが広がった。


「落ち着け!ここは狭すぎる!」


私は抗議の声を上げたが、リコシェはまるで聞こえていないかのように、再び弾丸を投げ出した。分裂するいくつかの弾丸がリコシェの頬をかすめ、血の筋を引いたが、彼女は退くことなく、怒りの目を輝かせてひたすらに発砲を続けた。


銃弾の嵐に面しても、火網の中心にいる男装の麗人は慌てることなく、むしろ嘲笑の笑みを浮かべた。


「なるほど。無差別の飽和攻撃か。」


怪人は手中の銀色の刀でいくつかの弾丸を受け止めながら、ゆったりと一歩を踏み出した。


「こんな精度の欠如する攻撃は、弾道を見破れば恐れることはないわ。」


一歩、また一歩、そして三歩。まるで散歩するように、怪人は弾丸の射線の間を歩いた。


大口径の弾薬は男装の麗人を避けるかのように、周囲の物を粉砕しても彼女自身には一切の損傷を与えなかった。轟音が作り出す嵐の中で、男装の麗人は、風が静まり返った台風の目のようだった。


「...この!」


リコシェが弾を放った隙をついて、敵は嗤いながら刀を抜く構えを取った。


「これで終わり!」






「引っかかったな。終わるのはお前だ。」






熱くなっていた表情が一瞬で冷静なものに戻り、リコシェは洗練された動作で空の弾倉を放り投げた。


怪人の斬撃を側身で避けつつ、リコシェは驚くべき速さでリボルバーに一発の弾を装填した。


左手で弾倉を軽く叩いて回転させ、ひと振りでそれを元の位置に戻した。


地面に現れたルーレットのような魔法陣がリコシェを中心に急速に収縮し、男装の麗人とリコシェだけが収まる大きさにまで縮小した。


刀を抜く動作が空中で止まり、麗人の顔には驚きが浮かんでいた。


「動けない?どうして?」


決闘遊戯デュエルゲーム、デスティニールーレット。」


リコシェは無造作に大口径のリボルバーを回しながら怪人に近づいてきた。


「射程は短いけど、おかげであんたがあたしのエサに食いついて、影響範囲に簡単に入ってきたんだな。」


「...っ!怒っているは演技だったの?」


「いや。本当に怒ってたよ。でもね、ギャンブルする時は感情を高ぶらせつつ、心は冷静に保つんだ。そうすることで、適切なタイミングで全チップを賭けて、最大の利益を手に入れることができる。」


「っ。」


怪人が何度かもがいたが、拔刀の姿勢から解放されることができないようだった。そんな怪人を見て、リコシェは鼻で笑った。


「無駄だ。ゲームのルールに反する行為で相手を傷つけることはできない。このリングの中に足を踏み入れたら、勝者が決まるまで出ることはできない。」


「勝者が決まるまで?」


「そうさ。まあ、単なる戦いを意味するわけじゃなく、公平なギャンブルだよ。」


リコシェは銃を自分の頭に向けた。


「ロシアンルーレット。あたしのお気に入りだ。」


「まさか...!」


「ゲームのルールはとてもシンプルだ。同じリボルバーに、弾を1発だけ装填し、交互に相手に向けて引き金を引く。死んでしまった方が負けだ。どうだ?簡単で分かりやすいだろ?」


「ふざけんな!こんな狂ったゲームに付き合うわけない!」


怪人が窮地に陥るのを見て、リコシェは面白いものを見たかのように笑った。彼女の笑顔はとても自然で、家の裏庭を歩くような感じだった。


「狂ってるのか?あたしはそうは思わない。人生って、元々ギャンブルじゃない?形は違うだけさ。勝ち続けられなかったら、あたしの運が尽きたってことだろう。」


その穏やかな表情を見て、私の背筋に冷たさが走った。私は声を上げて、目の前の少女を止めようとしていた。


「やめて。これ以上続ける必要はない。君はもう相手を制御下に置いたから、ここからは私が何とかするから。」


「残念だが、この魔法はそういうもの。いったん始めたら、ゲームを最後までやり遂げなければならない。まあ、相手の行動を強制的に制限する代償だね。それに、これがあたしの生きる道なんだ。」


少女は何かを諦めたようだが、同時に悟りを得たかのような笑顔を見せた。


「これはあたしが選んだわけじゃないが、おかげで強者と平等に戦える。ありがたいと思ってるよ。力やリソースに関係なく、あたしたちはテーブルで平等に立ってる。賭けるものは、お互いの命だけ。」


「っ!」


リコシェはじっと私を見つめながら、トリガーをゆっくりと引いた。


少女の頭がスイカのように爆発する幻を見て、私は思わず目を閉じた。


カチッ。


リコシェの頭が爆発することはなかった。肩をすくめて、彼女はリボルバーを回転させ、銃口を怪人に向けた。


「さて。あんたの番だ。」


その瞬間、ずっと沈黙していた片腕の怪人が戦斧を持って突進してきた。私も同時に異空間からパイルバンカーを取り出し、相手の前進を阻止した。金属がぶつかり合う騒音が鳴り響いた。


「どけ。」


片腕の怪人は低い声で言った。しかし、私は少しも引かなかった。


「貴様こそどけ。邪魔するのは許さない。」


片腕の怪人が戦斧を振り下ろしてきたが、私はパイルバンカーでその攻撃をすべて防ぎ、一蹴りで相手を退けた。仲間の支援が私によって妨害されると、男装の麗人がヒステリックに叫び始めた。


「ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!このような勝負、絶対に認めない!」


怪人の顔に冷や汗が浮かび、怒って大声で叫んだ。しかし、リコシェはまったく動じなかった。


「付き合い悪いね。まだ五発ある。その気分でい続けたら、このゲームを持ちこたえるのは難しいよ?」


リコシェは怪人に銃口を向け、再びトリガーをゆっくり引いた。






「行くぞ。運くらべだ。」






バン!


地面の紫のリングが消えた。


リボルバーの撃鉄が落ちた瞬間、火花と轟音とともに、男装した怪人は衝撃で激しく後ろに仰け反った。まるで糸が切れた人形のように、怪人は頭を後ろに倒したまま、重く地面に倒れた。


私と対峙していた片腕の怪人は、信じられないという表情で目を見開いた。


「ジャックポットだな。」


倒れた怪人を見ながら、少女は銃口からの煙を吹き飛ばした。口角をわずかに上げて、少女は獰猛な微笑を浮かべた。


「言ったろう、あたしは運がいいだ。」

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