第8話 黒と紅
「大変だ、騒動になっちゃった。」
相変わらず建物の屋上の一角を占拠し、私はビルの端でスマートフォンの画面をスワイプしていた。隣には漆黒の異空間が開かれ、
これらは本物の鳥ではない。錬金術のスキルで丹念に作り上げた小さなおもちゃだ。
金属製の鳥体には金属の翼が取り付けられ、シンプルな形状の頭部がついており、バネのような小さなアンテナが付けられている。最後に魔法少女特製の魔力を注入する。あら不思議、空気力学に反して羽ばたいて飛ぶ使い魔が完成した。
もちろん、私がこれを作ったのは単なる遊び心からではない。
「おお、見える見える。この夜景、なかなかいいじゃない。」
手元のトランシーバーからQのゆったりとした声が聞こえた。
「夜景を楽しんでも構わないけど、本来の目的を忘れないで。」
「わかってるよ。でも、あなたってすごく人使いが荒いのね。妖精の私でも、これだけの視野を同時に追うのは大変なのよ。」
「文句を言わないで。もう少し時間が経てば、私がいつでも監視できるようになるわ。ネットの情報によると、魔法省から私に対して指名手配が出ているみたい。用心しないと危ないから。」
「結局、あなたがあの魔法少女を暴行したせいで騒動が広まったわけだけど。あなたの乱暴さのおかげで、妖精界の仲間たちも目を皿のようにして私を探しているの。風波が収まるまでは一時的に戻れないわ。」
「君の立場はどうでもいい。ただ周りをしっかり監視することを覚えていればいい。」
「ひどい。サヨにとって私はただの都合のいい女なの?」
「そうでもない。私たちは共犯なんでしょう?」
「…その理論、どこかおかしい。まあ、いい。」
Qは一瞬ためらった。
「そういえば、次は他の魔法少女にどう対応するつもりなの?」
「現時点では逃げる方向に傾いてるかな。スノーランスに勝てたのは相手に慣れてたからだ。他の魔法少女と戦うとなると、そんなにスムーズにいかないだろう。あまり切り札を見せたくないんだ。」
「そうなるなら、そろそろ退避の準備を始めた方がいいよ。」
「なんで?」
「この近くのもう一人の魔法少女がこちらに気づいたみたい。白い服、金髪、胸に赤い宝石がある。覚えてる?」
「覚えてるどころじゃないな。まずいぞ。あいつ、おそらく剣崎紅だ。」
私は立ち上がり、逃げ道を頭の中で計画し始めた。隣にある異次元の小穴が「パチン」と閉じた。
「剣崎紅?」
「君たちが言う
「あら...こんなに早く彼女が派遣されるとは思わなかったわ。」
「Q。全力で逃げるから、ナビゲート。」
「了解。」
身を投げ出し、建物から飛び降りた私は、思わず横を見る。
遠くの交差点の真ん中で、一人の魔法少女が写真を撮る人々の包囲網を飛び越えていた。彼女の周りには華やかな火の粉が舞い、風が彼女の白金色の髪を舞わせていた。
「おおっと…なんと!こっちに向かってくるぞ。やっぱAランクの魔法少女は速いな。」
「実況やめて。どの方向に逃げるべきか教えなさい。」
「ごめん、もう遅い。」
急いで振り返った瞬間、プラチナの魔法少女がまるで流れ星のように、炎の光を尾を引きながら高速で私の方へと飛んでくるのが見えた。彼女の湖のように澄み切った碧緑色の瞳が、間近で私を深く見つめていた。
「ぐっ…!」
滑空中、私は無理やり軌道を変えて、隣のオフィスビルのガラス窓に体当たりした。転がりながら衝撃を抑え、素早く拳銃を抜いて立ち上がり、すぐさま戦闘態勢を整えた。
カタッ、カタッ、カタッ。その足音が、静寂を切り裂くようにして空間に響き渡った。
「初めまして。サヨナキドリ。」
白金色の魔法少女が目の前に現れた。彼女はとても華奢で、小柄な体格からはAランクの怪人を倒せる力を持っているとは思えない。しかし、ただそこに立っているだけで圧迫感を感じさせ、息苦しさを覚える。
「私はブレイズエッジ、あなたと同じく魔法少女です。突然ですが、魔法省まで私と一緒に来ていただけませんか?」
まさか、こんなことになるとは。
余目で周囲の環境を確認する。
ここはちょうど掩蔽物がなく、使われていないフロアのようだ。ここで正面から戦うのは非常に不利。
「...なぜですか?」
「あなたと私の後輩がちょっとした争いをしたらしい。二人で話し合うのもいいかもしれないと思って。私もあなたをもっと知りたいんです。」
「ありがたいけど、断らせてもらう。」
「そう。じゃあ仕方ありません。前の子たちと同じように、無理やり連れていくしかない。
少女は手を合わせ、ゆっくりと両側に広げる。炎で凝縮された剣が現れた。
「ブレイズエッジ、行きます。」
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