第6話 白と黒

「警察の皆さん、ここは私がやります!」


スノーランスが相変わらず突撃の姿勢を取っているのを見ながら、私は注意深く距離を測り、周囲の環境を黙って覚えていた。


雪野アリス、魔法少女コードネームは「スノーランス」。魔法少女活動の評価ランクはB級で、討伐数は14、単独10、協力4。魔法省に登録された魔法少女の中では、実戦派の中堅クラスに位置している。ほとんどの魔法少女と同様、精霊によって追跡され、ソーシャルメディアに活動状況を投稿している。ネットアイドルとしても人気がある。


正式な記録はないが、彼女の固有能力の一つは高速生成であり、魔力を物質化することができると推測される。頻繁に武器を投げて、再生成することから、そのような能力を持っている可能性が高い。


魔法少女の平均固有能力は2つであり、優秀な魔法少女は3つ以上の固有能力を持っている。しかし、彼女のB級評価から、平均値の2つの固有能力が適切であると推測される。


もう一つの固有能力は、単に「身体能力向上」である可能性もある。前回の交戦経験から、相手の身体強化倍率は私よりも高いことがわかっている。


もしQが正しいと言うなら、各魔法少女の基本能力はほぼ同じ。固有能力に差があるということであるなら、それに関連するシステムのスキルがあるはずだ。


まあ、とにかく。相手が魔法少女としての能力がどれだけ強かろうと、精神的には10代の少女にすぎない。


しかも数回戦っているので、動きを予測するのは容易い。


見ろ、第一手はやはり突きだ。


私は白い光のような突進を横躍りし、少女の顎を裏拳で打った。


「ぐっ…」


相手はよろめき、すぐに穂先を私に向けて掃く。


私は怪人から奪った包丁でこの一撃をかき消し、その後銃を狙い定めた。すると、彼女はすぐに槍を構えて防御姿勢をとった。


しかし、私が銃を狙い定めるのはフェイントだった。私は肩を使って彼女の硬直した体にぶつかり、同時に膝を掃くことで彼女のバランスを崩させ、彼女はすぐに地面に倒れ込んだ。


「…っ!」


「言ったでしょう、今日は君に少し教訓を与えるって。死には至らないが、骨折の覚悟はしておいた方がいいよ。」


「…ざれごとを!覚悟するのはあなたです!」


スノーランスは後方に転がり、槍を支点にして竿跳びのように身体を起こして姿勢を整えた。器用な奴だ。


「あっそ?じゃあ、続けましょう。」


「はぁああああ!」


再び閃光のような一撃が飛んでくる。しかし同じ攻撃を予測できるなら、回避するのは簡単になる。


今度は私が穂先に向かって前進した。私は身を低くし、少し首を傾けて攻撃をかわし、一歩前進してスノーランスの腕の中に飛び込んだ。


私は左フックを打って、少女の腹部を直撃した。


「っ!」


スノーランスの美しい顔は痛みで歪んだ。


しかし、私は彼女に息をつかせる時間を与えなかった。


体をくねらせ、私は全身を使って回し蹴りを彼女の側頭部に打ち込んだ。スノーランスは横に蹴飛ばされ、パトロールカーにぶつかった。衝撃でフロントガラスが割れた。


スノーランスは苦しそうに起き上がろうとするが、どうにも腕に力が入らない様子。私は彼女を見つめ、ため息をついた。


「素直に寝転がっていればどうだろう?魔法少女であっても、あの傷から簡単に回復できるわけではない。」


「っ!私の正義はあなたのやり方を許さない!戦える限り、諦めない!」


「正義?ヒーローとして正義を叫ぶのは良いけど、知っているかい、君が。」


私は拳銃を持ち上げ、今度は少女の眉間を狙った。


「力なき正義は無力である。私にとって邪悪と同義だ。」


「スノーランスさん!」


隣にいた数人の警官が叫び、私に向けて銃を構えた。


「止めて!」


スノーランスが大声を出した時、私は既に警官たちの銃撃をかわしていた。私は糸を引き、私を狙って撃ってきた警官たちを一瞬で縛り上げた。


ああ、私は警官を襲う犯罪者になってしまった。嫌だな。


「周りの人々を巻き込んだ責任は君にあるね。今回は誰が一般人を危険にさらしたの?」


「あぅ。ごめんなさい、皆さん…」


「今日はここまでにしよう。次回は、そう簡単に済むわけない。」


私は少女の首筋に手刀を打ち込んで、彼女の意識を奪った。スノーランスの頬から一筋の涙が流れ落ちた。


「やれやれ。本当に悪いことをしたな、今回は。」


私は手に持った武器をストレージスキルで収納し、自分の姿を夜色に溶かした。

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