第11話

「昨日はよく眠れたかしら?」


鉄格子の部屋から引き出された私は

昨日と同じ、無機質な部屋へと通された

そこで張りついたような笑顔が私と向かい合っていた


「さて始めましょうか、アタシもこれで色々忙しいのよ」

ちゃっちゃと済ませちゃいましょ

何か言い残したいことでもある?とポンポンと手を叩きながら

気軽に男は聞いた


そこにはナマズに似たような機械が

ぬるんと横たわっていた


魔女の作るものは銀色に輝いては

つるりとしていたが

この男の作品は何だか不細工だった


「これ知ってる?って知ってるわけないわよね

コレ、アタシが作ったのよ

あのビッチ要らずで身体矯正も出来ちゃう!

ああ、あんたみたいなのもお払い箱になったりしちゃうけどね」


男がぱちんと指を鳴らすと

昨日、私を引きずっていった黒服たちが

私の腕をがっしり掴んだ

私は抵抗する気もなくなされるがままだ

そこからは手慣れた様子で私を機械に繋げ

拘束バンドも着けた


「最後に聞きたい、これは私の人格を壊す機械なんだな」


ええそうよという声が聞こえ

顔の真上には満面の笑みがあった


私も思わず笑みがこぼれた


これで、後は・・


そこでいきなり

小さなドアがバーンという音を立てて乱暴に開いた

その一瞬で

上機嫌だったその顔が

ごきぶりでも嚙み潰したような苦い顔になった


それとほぼ同時にフリーズ、という何人かの声が響き

どかどかという靴音も体への振動として伝わった


「はい、そこまでよ!アタシの元下僕ちゃん!

誘拐監禁罪の上に暴行罪、追加しちゃおうか!」


これもまた聞き覚えのある声だった

横目で魔女の方角を追うと

魔女の背後には警官らしい人々が待ち構えていた


「あんたコンサルタントの癖に目立ちすぎ

被疑者の権利はさすがにやらないでしょうがね」


面倒臭そうにそう言ってのけた声にも聞き覚えがあった


・・まさか


「はい、お疲れ様

アタシは無事です。ごめんよこんなことに巻き込んで」


もう生きている顔を見ることはかなわないと思っていた顔が

照れくさそうに笑っていた

気づけば、拘束も外れていた


「・・どうして・・?」

それだけ言うのが精いっぱいで

頭は大絶賛混乱中だったが

涙だけは後から後から止まることがなかった


生きていて、良かった

本当に、良かった


「守るだけじゃないってのも良いもんでしょ?」


抱擁する私たちの傍で

あの魔女が何だかあの魔女らしからぬ声色でそう言った

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