体、チェンジ業社

朝野五次

第1話

ポツポツと雨粒が道を緩やかに黒く汚していく

そんな雨粒の数を一つ二つと数えて居られる程

あくびを何度しても咎められることのない程

私は暇を持て余していた


それでも隣の相棒、レジスターに表示されている数字は

少なくとも私の数か月の月給に値するものだった

ボロボロになりかけたシャツの袖で

ふと腕を伸ばしてみたが

その余りに艶々と銀色に輝くレジスターに気後れがした


それでも、良からぬ思いが脳裏をかすめると

あの魔女の不気味な笑みをもが、一緒に脳裏に浮かんだ

「連帯責任ってとっても良い言葉よね」

それはあくまで彼女にとって、ということだ

借金に縛られっぱなしの私ははいそうですねと従うしかないのだ


「そろそろ交代の時間だ」


立ち上がると同時に後ろのドアが音もせずに開いた

店のドアに掛かっている札が準備中へとくるりと回った


これから、あの仕事が始まる

ようやく自分の体に戻って来たのに。


金がないのは、頭がないようなものだという格言を聞いたことがあるが

もっといい喩えがある


金がないのは、自分の体がないようなものなのだ



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