第2話
私が中学生になった頃、飼い猫のアルに変化が見られるようになった。変化というか、異常とか変異と言った方がしっくりくると思う。
ある夜、寝ていた私は部屋に風が吹き込んでいることに気づいた。起き上がって窓が閉まってるか確認しようと近づいた時、少しだけ開いた窓から屋根の上で踊るアルの姿を見た。アルは後ろ足で立ち、前足をぐるぐる回しながら踊っていた。まるで人間みたいに。私は見なかったことにして、窓は開けたままベッドに戻った。
更に数日後、私の膝で寝ていたアルが寝言で「マグロ食いたい」とハッキリ言った。
猫は年を経ると怪異になるとか聞いたことがある。これらが年齢のせいか小鬼を喰らったからか分からないが、あまりにガサツじゃないか?こういうのがバレたら人前から姿を消さなきゃいけないんじゃなかったっけ?
私はアルの前で電話してるふりをしながら「最近、1階の屋根の上に誰かのぼってるみたいで親が防犯カメラ取りつけるって言ってんだよね」とわざとらしく言ったり、アルが寝てたら寝言対策に厚手のタオルをかけたりと、色々フォローするようになった。
正直、疲れる。
ただ、悪いことばかりでも無い。
以前、母が1人で家に居る時に悪質なセールスに困らされたことがあるそうだ。
作業服を着た二人組が玄関先に居座り、しつこく高額浄水器を勧めてきたところ、部屋の奥から虎のような唸り声が聞こえ、そちらに目をやった二人組は突然、逃げるように出て行ったとか。彼らが何を見たかは分からないが、アルが追い返したのは間違いないだろう。
多分、アルはアルで、これ以外にも家族を守る為に色々やってくれてたんじゃないか、とか思う。
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