第225話 魔王少女は対峙する
「700と5」
結局この場に来た魔族をだいたい始末したものの…まだ300近く残っている。
なんとなく覚えている範囲で家族がいた気がする魔族を残して見せつけるように魔族たちを惨殺してみた。
こうすれば残りの魔族の居場所を教えてくれたりしないかなと。
「ま、魔王様!こいつの家族が北にある倉庫の地下に隠れてます!」
「お前!?ふざけるな!裏切るつもりか!?」
「うるさい!俺は死にたくないんだ!」
「てめぇ!!魔王様!こいつの恋人があっちの区域に…!」
そうして始まる暴露合戦。
一度に言われても覚えきれるか不安だからやめて欲しい。
「魔王様!私には娘がいます…居場所を教えるので私の命だけは…」
「ふーん。どこにいるの?娘さん」
「え、あ…まずは身の安全を…」
「どこにいるのか聞いてるんだけど?」
「ひっ…言います…言います!」
「いい子」
女魔族から娘の居場所を聞いた後、その魔族をぷちっと綺麗に潰した。
「あ、な…魔王様…今そいつちゃんと家族の居場所言って…」
「ん?いやだって娘を差し出して助かろうとする母親なんてありえないでしょ?死んで当然だよ」
同じ女として腹が立つ。
いや、同じ女だと思いたくない。
虫だ、いやゴミか。
「あとは見せしめかな?今までの話で私に嘘の情報言ってた人も彼女と同じになるからね」
「そ、そんな…」
「どうしたの?そんなに汗かいちゃってさ~もしかして私に嘘ついたの?」
「い、いえそんな…」
私は目の前で汗で身体をびっしょりと濡らす魔族の片腕をオーラで引きちぎった。
「うぎゃあああああああ!?」
「うるさいって。私に嘘ついたんだから罰を受けるのは当然でしょう?魔王だよ私。でもやっぱりみんなまだまだ習慣が抜けきってないね~」
「な、なにを…」
「だってここまできてまだ私の事馬鹿にしてるんでしょう?じゃないと嘘なんてつかないもんね~あ~あ~ショックだなぁ」
そこで魔王の力である深紅のオーラを無意味に放出して威圧してみた。
面白いように魔族たちは縮みあがって私に跪く。
実に理不尽だ。
さっき馬鹿にしてみろと言ったのは私なのに、馬鹿にしたね?と急にキレ出すのだからたまったもんじゃないよね。
勿論わざとだ。
これまた皇帝さんから教えてもらったなめられないための支配術…なんだけど正しいのかはよく分からない。
あの人には正直お世話になりすぎてるから頭が上がらないのだけど…リリと仲がいい事にはちょっと…いや、かなり私は悶々としている。
嫌な女と思われたくないから言わないけどリリには私以外の女と仲良くしないでほしい。
勿論男も嫌だ。
でもそんなの無理だし本当に実行に移されても困るので絶対に口にはしない。
「滅相もございません!我らは魔王様に忠誠を誓っております!」
「その通りです!」
「いや、君たちさっきまで私に武器を向けていたくせにどの口が言うのさ」
「ち、違います!あれは…そう!無理やり!無理やり連れてこられただけなのです!」
「へぇ~それは災難だったね」
「ええ!それはもう!」
「じゃあここに残ってる君たちは私に忠誠を誓ってくれてるんだね?絶対服従なんだね?」
「もちろんです!」
「じゃあほら、みんな残りの魔族たちをここに連れてきて。家族も含めてだよ」
私は手を一度叩いて皆に聞こえるように言った。
「え…?」
「聞こえなかった?君たちが居場所を知ってる他の魔族を全員ここに連れてきてよ。私に忠誠を誓ってるのならやってくれるよね?」
「もちろんです!…あのしかし…その…」
「どうしたの?」
「連れてきた者はどうするのでしょうか…?それに私たちの身の保証は…」
私は頭の中でリリを思い浮かべて、あの特徴的なニッコリ笑顔を真似して魔族に笑いかけてみた。
今ではそんなことないけど出会ったばっかりの時はリリの笑顔はすっごく怖かったんだよね。
絶対的に自分より強くて、力を振り回してくる相手が笑いかけてくる…これほど恐ろしい物もないよね~。
それはそうと質問に答えてあげないと。
「もちろんみんな殺すよ?」
「そんな!?」
「まぁでもそうだなぁ~さすがに少し理不尽かもしれないからじゃあこうしようか。一番魔族を多くここに連れてきてくれた人と、その人に連れてこられた人だけ助けてあげる」
「ま、待ってください!それは余りにも…!」
「はいスタート!グダグダしてるとこの場で殺しちゃうよ~」
私が再び手を叩くと蜘蛛の子を散らすように魔族たちは慌てて走っていた。
ほんと馬鹿馬鹿しい種族だ。
まぁいいや、これでしばらく待ってれば勝手に向こうから殺されにやってきてくれるのだから。
そうしてしばらくぼ~っとしているとひゅんと風を切る音が聞こえた。
それと同時にオーラが自動的に私の右後ろに展開されて何かを受け止めた。
それは不思議な形をした剣で…刀というのだったかな?
「どちら様かな」
「どちら様だと思いますか、逆に」
間違いなく魔族じゃない。
背後から感じる気配はかなり独特で異質なものだし今現在もオーラと鍔迫り合いを続けている刀も砕くことさえできない。
私はついに来たかと少しだけ息をのむとゆっくりと背後を振り返った。
刀を握っていたのはリリに匹敵するほどの美人で…瞬きするたびに髪色が変わっているように感じる不思議な女性。
「原初の神…」
「どうも」
無表情で感情のこもらない声で空洞のような瞳で原初の神は私の後ろにいた。
ちょっと訂正、やっぱりリリのほうが綺麗だ。
「もっと早く来るかと思ってた」
「何をするつもりなのか分からなかったので泳がせてました。魔族が惨殺されるのが楽しくて見てたというのもありますが」
そういう割にはちっとも楽しそうには見えない。
何処までも無表情だ。
「それで何か用です?」
「ええまぁ。さすがに魔族を殺し尽くされるのは困るのでここいらでやめてくれはしないかと」
「嫌だなぁ、ずっと見てたというのなら先ほどの会話聞いてましたよね?皆殺しにするつもりはありませんよ」
「いいえ、殺すつもりです、あなたは。だって同じ気配を感じますから私と」
やっぱり神様に嘘はつけないらしい。
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