第183話 人形少女は心配する
マオちゃんとゆっくりしていると遠くのほうで凄い爆発音のような物が聞こえて慌てて外に出た。
だけどかなり離れてる場所みたいで何もわからない。
「今のなんだったんだろう…?」
「さぁ、事故とかかな」
びっくりするほどマオちゃんは興味がなさげだった。
それどころかむしろ不機嫌そうに自分の髪を弄んでいる。
たまにマオちゃんはこんな感じで不機嫌になることがよくあるけどメイラやアーちゃん曰く私と一緒にいる時に横やりが入るとマオちゃんはそういう態度になるという話をそれとなく聞いているので今回もそれなのかな?と思ったり思わなかったり。
でも私は嬉しいけどそれにしてもマオちゃん的に魔界ってそれほど興味がない事なのだろうか?
「あんまり気にならない感じ?」
「うん、別にどうでもいいかな」
「そうなの?」
「事故ならそれでいいし、モンスターが暴れてたりするのでも別に…って」
マオちゃんの声は本当に心底どうでもよさそうだった。
ちょうどいい機会だと思ってここで私はずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「マオちゃんは最終的に魔界をどうしたいの?というか今なんでこんなことしてるの?」
「…急だね」
「ずっと気になってたんだよ~」
「…」
マオちゃんは気まずそうに私から目をそらすとうつむいて自分の髪を弄び続ける。
「言いたくない?」
「…うん。リリには言えない」
「私には?」
「…ごめん。でもいつか…いつかは話さないといけないって思ってるけど…今は…言えない」
「そっか。うん、いつか話してくれるなら私はずっと待ってるからね」
「ごめんね」
別に謝ってほしかったわけじゃない。
私には言えないって言葉に少しだけショックを受けなかったと言えば嘘になるけど…それでもマオちゃんが話したくないというのならそれを無理に聞き出そうとも思わない。
「マオちゃん」
「…」
「あんまり考えすぎたらダメだよ。何があってもいつだってどんな時も私はマオちゃんの味方だからね」
「…うん。ありがと」
そうしてマオちゃんは少しだけ笑ってくれた。
そういえばマナギスさんから買った指輪をずっと持ったままなんだよね。
すぐに渡そうって思ってたんだけどいざとなるとなんだか気恥ずかしくなってしまって渡せていない。
こっちの世界には指輪を送るって言う文化なんてないみたいだし気軽に渡せばいいのだろうけど…でもなんというかこう…ちゃんとムードを大切にしたいという乙女心のようなものもあるわけで…。
唐突に指輪の事を思い出したけど今ではないなたぶん。
「とりあえずそろそろ帰ろうか?リフィルとアマリリスも待ってるかもだし」
「そうだね…あ、そういえばリリはちゃんと二人をどこに連れていくか決めたの?」
「え?」
「どっかの王国に行く前に帰ってきたら遊びに連れて行ってあげるって約束してたでしょ?」
「…あ」
「忘れてたんだ?」
やばい。
完全に忘れていた。
どどどどどどどどどうしよう!?
「ま、マオちゃん!!」
「私に頼ってもだーめ。ちゃんと自分で考えないと」
「いやでもあれ言い出したのマオちゃんだし…!」
「二人楽しみにしてたよ。リリは色んなところに行ったことあるからって言っておいたから」
「ええ!?」
「ふふふっ!」
悪戯っぽい笑顔を浮かべたマオちゃんはそのままゲートを使って行ってしまった。
どうせ帰るなら私の空間移動で帰ればいいのに。
「あ、もしかして逃げられちゃったのかな…?」
もしそうならそれだけ魔界の件はマオちゃん的に触れられたくない事だったのかもしれない。
反省である。
とにかく私も帰ろう…そう思った時、背後に誰かいるような気がして振り向いてみた。
そこに美人なお姉さんがいた。
どういう原理なのかは分からないけど瞬きするたびに色が変わっているような気がする不思議な髪のお姉さん。
「はじめまして…というのも不思議な話ですけどはじめまして。お人形さん」
そう言ってそのお姉さんは無表情で片手を上げた。
ちょっと気になる言い方だけど間違いなく初対面の人のはずだ。
とりあえず私も同じように手を上げて挨拶をすることにした。
「はじめまして~どちらさま?」
「どちらさま…そうですね~実は何者なのかと問われてもなんと返していいのか良く分からないのですよね私。何者なのでしょう私は」
「いや私に聞かれても。とりあえず名前を名乗ってればいいんじゃないのかなぁ?私はリリ。お姉さんのお名前は?」
「フィルマリアと名乗っています。どうぞよろしく」
しっかりと挨拶を返してくれたその様子に私はこの人は悪い人じゃないと思った。
それと同時にどこかでその名前を聞いた覚えがあって…どこだったかな?
「どこかで会った事あったかな?」
「どうでしょう。あると言えばあると思いますが」
「そっかぁ…ん~?でもコウちゃんとかアーちゃんが何か言っていたような」
「…どちら様でしょう?」
「私の友達~」
「そうですか、まぁいいです。それより少しお話ししませんか?私と」
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