coc後日談

@nori_465

柏屋源寿之後日談

「ごめんね……後はよろしく。」

「はい、行って参ります。」



あれから3日。

明緒ちゃんと僕は、明智様の命令通り農民に扮してその時を待った。

尤も、彼女はもうあの方に未練はないのだろうけど……。こうなった以上、協力してくれる人が必要だった。



「(いつかお化粧をして差し上げたい、なんて思ってたっけ)」



刀を振るう瞬間。ほんの少しだけ、抵抗されるんじゃないかと期待した。

そんなこと、有り得無いのに。


綺麗に洗った首に薄化粧をし、髪を梳く。

蝋のように固い顔からは何の感情も読み取れない。




あんなに優しい顔で、笑ってくれてたのに。

その輝きはもう、どこにもない。


いや、僕が勝手に夢見てただけなのかな。



明緒ちゃんに明智様を託して、自分は静かに家へ帰った。

やるべきことを成すために。



「……貴殿の真なる望みを叶えて差し上げられず、申し訳御座いませぬ。」

「しかし、貴殿の命(めい)を最後まで叶えんとする家臣が居りますことを、どうか……どうか忘れないで……。」


飾り気のない白い服を着て、ひとり座す。



主君殺しの責任をお取りになるというなら、僕だってそうするべきだ。


……なんて。


僕には止められなかった。

だって。仰っていたこと、分かっちゃったんだもの。


明智様の居ない世の中に、未練などあるものか。


想うのはずっと、唯一人。



「一元に帰す心しらぬ 人は何とも言はばいへ──」





「地獄の果てまで、お供いたします」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る