---『白井 熊之 の 後日談』---
瞼を開ける。
家を出て、危険とされているエリアへ向かう。
目の前にいるバケモノを見た。
変身して、飛びかかってきたバケモノを潰した。
変身を解いて、家に帰る。
シャワーを浴びて飯を食う。
布団に入って瞼を閉じる。
-
瞼を開ける。
軽装のまま家を出て、路地へ入る。
目の前にいるバケモノを見た。
変身して、バケモノを潰した。
変身を解いて、家に帰る。
シャワーを浴びて、味のしない飯を食う。
布団に入って瞼を閉じる。
-
-
瞼を開ける。
軽装のまま家を出て、フラフラと街を歩く。
目の前にいるバケモノを見た。
ぐちゃぐちゃに潰れた、バケモノだったものを見た。
変身を解いて、家に帰る。
布団に入って瞼を閉じる。
-
-
瞼を開ける。
目の前にいるバケモノを見た。
バケモノを潰した。
家に帰る。
瞼を閉じる。
-
-
-
瞼を開ける。
バケモノを潰す。
まわりにはなにもいない。
瞼を閉じる。
-
……ざあざあと鳴る音に、瞼を開く。
びしょ濡れの身体が重い。
降り頻る雨のなか、視線で周りを見渡す。
すぐ横の瓦礫に、フェンスごと潰された『この先危険』の看板が見えた。
反対側には――元は家だったのか店だったのか、建物の残骸が新たな屋根を形作っている。
「……つかさ?」
瓦礫に手を伸ばす。雨に打たれた右手が、何も掴めないままゆらゆら揺れた。
「⬛︎⬛︎……██████」
すぐ後ろから、バケモノの声がする。
殺さねば。
守らねば。
――何を?
「██████ ⬛︎⬛︎⬛︎█████」
黒森は、市民を守ると言っていた。
司は、何を思ってあの姿でいたんだろうか。
俺は、どうすべきだった?
俺は、どうしたらいい?
「█████――……」
「お願いだ」
「教えてくれ、司」
バケモノの血肉が小さな川になって、雨とともに瓦礫の隙間へ流れるのを見る。
灰色の空を仰いでも、雨は当分止みそうにない。
ざあざあと鳴る音を聴きながら、瞼を閉じた。
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