弱々天使の嫌々奮闘記

清水水清

プロローグ

 静寂、しーんとした会議場で私は手錠をかけられていた。ついでに足枷もしている。


かれこれ十分間この状態だ。目の前の人達は何も喋らない。何を待っているのだろうか。

こういう静かな感じって苦手なんだよな。

私は思い切ってこの状況について尋ねてみることにした。


「あ、あのーどうして私はこんな状..


「静粛に!!」


「ひうっ!」


「これより、六王剣会議を行う!」


言葉を遮ってきた、びっくりした、心臓がバクバクなっている。

 真ん中で座っている人の宣言でやっと会議が始まった。


「今回の議題はアクアリア・レンティーク

テロリスト疑惑についてだ」

 

ん?

今、なんて言った?聞き間違いだな、うん、そうに違いない。


「最近、捕まえたテロリスト共がレンティーク様に命令されてやったと供述していた、ちなみにこの国にレンティークという姓はお前しかいない」


「た、他国にいる可能性もあります!」


「確かにな、後で調べておくことにしよう」


誰だよ、レンティークを語ってる奴!私への風評被害だ!


「まぁ、現時点で一番怪しいのはお前なんだ、アクアリアいや、クソテロリストの女!さっさとアジトの居場所をはけ!」


「ち、ちがいます!私はテロリストではありません!」


 一番左の席に座っているスキンヘッドの男が吠える。正直に言うと、めちゃくちゃ怖かった、逃げたい。


会議が始まってまだ十分なのにさっさとはけってどんだけせっかちなんだよ。


 今、私の目の前には四人の天使と一人の人間が座っている。

エスカトル王国最強の戦士ー六王剣だ。ちなみに私も六王剣だ、ドヤ。ドヤっている場合じゃなかった。


 というか、聞いていた話と違うんだけど。

私はちらっと通信用魔道具の六王剣専用グループメッセージをみる。


『明日、急遽六王剣の親睦会を開くことになったから十一時に会議場集合よろしく❤️』

『犬の了解スタンプ』

『猫の了解スタンプ』

『アニメの了解スタンプ』

『実写の了解スタンプ(音声付き)』

最後に私が文字で『了解しました』と打つ。

 

ふと思ったんだが、親睦会を開いてくれた人が女性と仮定すると了解スタンプ四天王の中にスキンヘッドの男がいるということになる。

私がギャップで風邪を引くのが確定した瞬間である。


「取り調べ中によそ見をするとは私たちのことをなめてるのかしら?」


「疑わしきは拷問で良いのでは?」


 真ん中の人の左右に座っている縦ロールの貴婦人と髭を生やしたおじさんが声を発する。

怖い、脚が震える、特に最後のおじさん。何の脈絡もなく拷問しようと言ってきた、拷問ってなんやねん、やめておくんなまし。

恐怖で語尾がおかしくなった。

 

というか、私は昨日六王剣になったばかりである。初仕事が取り調べって、どないなっとんねん。また、語尾がおかしくなった。


 あはは、もう転職しようかなー

 うふふ、もしかしたら終身刑かもよー

私の頭の中の天使と悪魔が互いに手を取り合って踊っている。

 

「拷問は駄目ですわ。もし、アクアリア・レンティークがテロリストでなかった場合私たちは深い傷を彼女につけることになるのですから」


こんだけ疑われるとちょっとの優しさがとても沁みる。


「私の提案なんですが逃げ出されたら困るので牢獄にぶち込むのはどうですか?」


前言撤回、優しくない。

嫌だ、牢獄は嫌だ!質素な食事は嫌だー!

どうして私がこんな目に。

 今思えば、私がこうなった理由は三日前のアレが原因なのかもしれない...


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