【逆転なし】ショタサバイバー~攻撃不能の不遇スキルを得た少年たちが転生によって得た超魔力をちゅうちゅう吸われ続けるだけの物語~【おねショタ】

Drain太郎

第1話

※冒頭の勇者が戦犯です※


【真紅の月が昇るとき、世界を救う勇者が現れる。

 その者、六人の覇者を打ち砕き、『中核の王』を屠り去る。】


 世界に選ばれし勇者の剣は敵を山を山ごと切り開き、魔法は大地ともども焼き尽くす。

 神に愛された幸運とともに異国より訪れた勇者は、ハンニカムの世界を救った。


 勇者を送り出した街の人々。

 辛く厳しい道中を共にしたかけがえのない仲間たち。

 ―――彼らを、犠牲にして。


 がしゃん、と勇者が剣を落として膝をつく。

 目の前では山ほどの巨躯を持つ『六角の王』が核を潰され、崩壊を始めていた。

 勇者は自らの胴体に刺さった岩片など意に介さずに、地面に転がる仲間の骸を抱きかかえる。


「そんな……僕は、誰のために戦ってきたんだ……」


 空に銀河の架け橋がかかる星降る夜に、勇者は自身の運命を呪った。


「争いなんて……無意味だ」


 強く、強く呪った。


 《汝、願いを述べよ。どんな願いも、ひとつだけ叶えてあげる》


 王を殺し、つまり新たな王と成り、ここハンニカムの地において全知全能にも等しき力で、呪った。


「みんなと平和に……生きたかった」


 《平和に生きる目的を持つ個体:検索中》


「山を切り開く力なんていらない。大地を焦がす炎なんていらない。明日食べる肉を切るだけの力と、暖炉に火をくべるだけの力があれば……いや、それさえも不要だ。力なんて、必要なかったんだ」


 《力なき個体:候補追加》


「……願わくは、どうか、誰も傷つけない平和な人間が、この地の次なる勇者になることを願う!」


 《誰も傷つけない人間:該当なし、各種スキルにて代行》


 勇者は天に向かって、吠えた。


「どうか、僕の悲願を継いでくれ! 誰も傷つけない、平和の勇者よ!!」


 《希望承諾:召還を実行するね》


 その日、その世界でも珍しい流星群が、この世界の夜空を青く照らしていた。


※冒頭の勇者が戦犯です※ 


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