KAC20245 はなさないで はなれないで
真留女
はなさないで
オオヤ幼稚園では卒園式の練習中です
卒園クラス担任のミカ先生が会場の入り口で
園児を整列させています
「はい みんな静かに 話さないで! シ~ッ!
いいですか お隣さんと手を繋いで入場したら
お席に着くまでは手を離さないでいましょうね」
「せんせ~い わたし たくみくんと手を繋ぐのいやで~す」
「ぼくだって いやでぇ~す」
「ハイハイ もう行きますよ」
「みんなちゃんと座ったかな? たくみ君! 椅子を離さないで!
通路に飛び出してるじゃないの」
「だってゆりちゃんデブだから… 何すんだよぉ! 髪つかむなよぉ!」
「しのぶ先生! ボンヤリ見てないで二人を離して! 本番の時私は
動けないんですからね あなたが目を離さないでいてもらわないと…」
「ミカ先生 卒園式終わったから辞めるって 急に言われても困りますよ」
「すみません園長先生 でももう決めた事なんで」
「あなたねえ 決めた事ってだけ言って 理由も話さないで辞めるなんて
そんな勝手が許されると思うの?」
「そうですね 一緒に住んでる彼が急にアメリカに行くことになって
私 結婚してついて行くんです 本当に急な話で 私も驚いているんです
でも彼が何があってもお前を離さないって言うので… スミマセン」
夜、山に巻きつくような道路を登っていく車。
運転している男を助手席で見つめているのはミカ先生。
「今晩 流星群を見たら本当に終わりだからな」
「え~っ 何のこと?」
「お前 そう言ったじゃないか もう自由にさせてくれるって」
「いやだ~っ 私の事見放さないで 私 仕事も辞めたの
これからは ずっとずっとあなたの為だけに尽くす 放さない!」
「お おい手を離せよ ハンドルが回せないよ」
「やぁ~だ この腕は絶対 放さない 一生あなたを離さないで
生きてくの」
「手をはなせっ! 放してくれっ! ハンドル ハンドルが…」
「もう ハンドルの事ばっかり言わないで 妬けちゃうじゃない
このまま二人で流星群と一緒に流れて行きましょ 私 あなたとなら
どこにでも行ける 絶対この手は離さない」
「うわぁああ~っ!」
車は闇に向かってジャンプし 二人は投げ出されて途中の木引っ掛かった
「離さないで」「冗談じゃない 二人の体重がかかったらこの木はもたない」
男の服を握りしめたミカの指は 最愛の人によって一本ずつはがされていく
「これであなたは一生〝ミカを殺した人〟になるのよね たとえ私が死んでも
あなたから私は は な れ な い で い … 」
ミカの体は 闇に吸い込まれて行った
KAC20245 はなさないで はなれないで 真留女 @matome_05
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