消えた店主(猫、飼い主を捜索する)
なみっち8
プロローグ
とある保護猫カフェにて。
たくさんの猫たちが、思い思いの場所でリラックスして過ごしていた。
彼らは、身勝手な飼い主に捨てられたり、保健所に持ち込まれたりした末、運良くこの場所へと辿りついた。
店主はちょっと個性的な男性で、売れないホラー小説家として執筆に励む傍らで、猫の保護活動を行っている。
育ちすぎていたり、人に慣れなかったり、器量が悪いなど。
そういった理由で、すぐに貰い手のつかない猫は少なくない。
そんな彼らは、保護猫カフェに集められた。
店主の話によると、経営状況が厳しいため、軍資金を稼ぎたいのだそうだ。
猫は労働に向かないというのに、自分の食い扶持を自分で稼がねばならない。
何とも世知辛いものだ。
ここに来た猫は、新しい住み家が見つかるまでは、猫カフェの社交員として働かなければならない。
人間相手に媚びを売るのは業腹だが、業務内容は割りとチョロかった。
大抵の客は、奴らが可愛いと考える仕草をするだけでイチコロだからだ。
帰り際に、膝の上でゴロンとしながら腕に抱き付いて「まだ帰らないで」と鳴くだけで、客はだらしない顔で延長料金を払ってくれる。
汗水たらして働く猫たちは、自分の仕事に誇りを持っていた。
我々は人間1匹と、たくさんの新入り猫を養っているのだ。
なんとも立派な、自立した猫生ではないか。
そんなある日のこと。
ゆゆしき事件が起こった。
「我々のメシ係が帰ってこない!」
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