俺もVtuberになりたい。

 その日、和俊はとあるニュースを見て衝撃を受けた。

 どうやらあの人気芸人明石家さんまさんがVtuberとなっていたというニュースだ。


「いいなぁ……俺もVtuberになりたい」


 ふと、そう呟くと、そこでスマホをいじっていた光が呆れていた。


「アレはさんまさんだからできたことであって、そこらへんのあんたにできるわけないじゃん」


 なかなか辛辣だ。

 お前だって元々はただの引きこもりだったくせに。


「くそう……俺はやってやるぜ!資金はあるからな!」

「会社の経費には手を出すなよ!?」


*****


 俺はこれでも多数の会社を受け持つ大資本家だ。その為プライベートマネーだけでも十分にVtuberのために費用はあるのだ。

 その為、くりばいたるや他所有会社の経費に手を出さなくてもそんなことは可能なのだ。

 というわけで俺は軽々と自らのモデルを作り上げることに成功した。


「ふむ……なかなかのイケメンだ、俺には勿体無い」


 俺だったら舞元のような感じのキャラが似合うのかもしれないと思いもしたが、ここはイケメン青年系にしてみた。

 しかしこれ、俺の声に合うのだろうかと不安にもなったが。まあ大丈夫だろう。


 その頃にはくりばいたる内で俺のVtuber化という情報が出回っていた。

 種は勿論、灯見光。


「これって私らで宣伝やってた方がいいかな?」

「大丈夫でしょ、アイツなりにはただの趣味で言うとあのVtuberは個人勢なようだから」


 というわけで個人勢Vtuber・方者無二赤かたしあむにあのVtuber生が始まったようだ。


「こんばんはー!みなさーん!方者無二赤でーす!本名は佐藤和俊。Vtuber事務所・くりばいたるの社長なんかしています!」


 いきなり何言っているんだこいつ!

 その配信を見ていたくりばいたる所属Vtuberが一斉に思っていたことであった。


 結果、方者無二赤の話題はネットに出回った。

 いきなり自分の役職、本名をぶっちゃけるVtuber。

 しかもその役職があの配信内瞬時10万人Vtuber彗星未鈴の所属事務所・くりばいたるの社長ときた。

 話題をかっさらないわけがなかった、


 というわけで、そんな癖強男性Vtuberの第二回配信が待ち遠されたわけであるが、それは来なかった。


 そのことについて後日、アカナが訊いた。


「和俊さんVtuber活動はどうしたのですか?」

「うーん、やっぱ仕事の後は疲れるから無理だね」


 結論、彼にVtuberというものは向いていなかったようだ。

 とアカナは心から思ったという。

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