第7話説明配信①
「レイさん配信の準備が整いました。いつでもいけます」
「ありがとう、アオイ」
雪と別れた後、現地に押し掛けたマスコミ連中に気づかれないように気配を消してクランタワーにある自らの執務室に帰ってきたレイはその時いたクランメンバーに事の経緯を軽く説明して配信の準備を進めていた。
「にしても凄いですね。まだ配信始まってもいないのにすでに待機人数が5万人を超えていますよ」
メインでもない私の方が緊張しちゃいますとこぼすアオイ。
「まあそれだけネクサスの注目度が高いってことだろうね。ま、あんま緊張しないでいいよ。仮に炎上したところで我々に何か痛手があるわけじゃないし」
最悪日本全体を敵にしても負けることはないし海外に行くって手もあるしね。と笑えないブラックジョークをこぼすレイに先ほどとは違う意味で顔が引きつるアオイ。
(そりゃあ、あなた方はそうでしょうけど私は一般人なんですよ)
「できるだけ穏便に終わらせてくださいよ?」
不安になって忠告をするアオイ。
「分かってるよ。炎上してもいいとは言ったけど、別に好んでしたいとは言ってないし。それに余計なこと言いそうなヒカリには配信に出ないように言いくるめたから大丈夫大丈夫」
アタシも一緒に配信に出たいと駄々をこねるヒカリに来月一緒にダンジョンに行く回数を増やすと約束して納得させたのだ。
そんなことをアオイと話していると雪チャンネルで告知した時刻の21時になろうとしていた。
「よし、それじゃあ配信始めようか!」
レイの合図でアオイが配信開始をクリックした。
画面にレイの姿が映し出され配信がスタートする。
「はいどうもー、ネクサスのリーダーやってますレイでーす」
5万人の視聴者の前でも一切気負わず漫才のはじめのような
挨拶をするレイ。途端に、
【キタアアアアアアアアアアア!】
【待ってました!!】
【雪ちゃん助けてくれてありがとーー!】
【ネクサスだーー!】
【入り漫才かよw】
【てか部屋綺麗】
【ヒカリちゃんはどこだー!】
【待機5万はえぐい】
【雪ちゃんねるから来ました!】
コメント欄が爆速で流れる。
「おー凄いコメントの数。目で追うの大変だね」
のんきな感想を述べるレイ。
【暢気か!】
【緊張感ねえな】
【おい、目で追うの大変ってこのコメントの数逆に目で追えるのかよ!?】
【確かに】
【凄いなーAランクってこの数見切れるんだー】
【いや、Aランクでも大抵の人は出来ないかと...】
【探索者と思われる人が速攻で否定してて草】
【現役探索者も結構視聴してんのかな】
「さて、改めまして初めての方がほとんどだと思うのでまずは自己紹介を。
ネクサスのリーダーおよびクラン、ネクサスリンクのクランマスターをしているAランク探索者のレイです」
【肩書が強すぎる】
【ネクサスのメンバーってだけで強いのにリーダーとか】
【探索者でこいつより立場強い奴いないだろこれw】
【なんでこんな奴がリーダーやってんだよおかしいだろ】
「とりあえず今日はタイトルにもある通り説明配信ってことでコメント拾いながらでもいいんだけどうちの優秀な秘書が事前にネットで質問集めてきてくれたから基本的にはそれに答えるって形でちょくちょくコメントも拾いつつ進めまーす。じゃあ、アオイ声だけでいいから挨拶して」
「はい、質問読みさせていたただきます、レイさんの秘書のアオイです。今日はよろしくお願いします」
【声だけでわかる絶対に美人さんやん】
【アオイって名前も美しい】
【今日の今日なのにまとめてるのは優秀】
「ではさっそく一つ目の質問から行かせていただきます。えー、なんでネクサスのリーダーであることを隠してたんですか?」
「うーん、別に隠してるってつもりでもなかったんだけど公表しなかったのはする意味がなかったからかな」
【してなかったら今こんな混乱がおきているんですがその】
【ネクサスの人って基本みんな名声とか興味ないのかな】
【そんなものなくても強いしなあ】
「では次の質問行きます。ネクサスにはSランクが3人もいるのにどうしてレイさんがリーダーをやっているんですか? リーダーになった経緯を教えてください」
【お、確かにこれは気になる】
【普通Sランクがやりそうだもんな】
「俺がリーダーやってる理由かあ。うーん、まあ強いて言うなら探索者になろうって誘ったのが俺だからかなあ。知っている人も多いかもしれないけどネクサスって幼馴染で構成されたパーティーで子供のころに俺が探索者になろう!って誘ったらほんとになっちゃって。言いだしっぺだから何となく俺がリーダーやるよって話になってそのままずるずるとって感じかな。ほんとは今すぐにでもやめたいんだけどね...」
【言いだしっぺレイさんだったんだ】
【レイさんが誘わなかったら日本にSランク探索者がひとりもいなかった可能性も...】
【てかリーダーでかつ発起人なのに今まで知られてなかったてうける】
【なんでやめたいの?】
「なんでやめたいの?かあ。それはね、俺が弱いからだよ。いやあみんなほんと強すぎるからついていくの大変なんだよねえ」
困った困ったと笑うレイにコメント欄では疑問の声が多く上がる。
【弱い? はあ? オーガを一方的に殺しておいて?】
【お前が弱いっていうなら他の探索者はどうなるんだよ!】
【探索者と思われる連中が発狂してて草】
【過ぎた謙遜は嫌味に聞こえるってやつだな】
【Sランクに比べたらそりゃあ弱いのかもしれないけど、でもレイさん以外にも同じAランクのメンバー二人いるじゃん】
「たしかに俺と同じAランクの子も二人いるけど。なんて言ったらいいのかな。Aランクって多分一番同じランク内でも実力に幅があるんだよね。そもそも君たちSランク認定される基準って知ってる?」
【そりゃああれだろAランクより強かったらだろ】
【知らん】
【下層ソロ攻略とか?】
【それだったらネクサス全員Sランクなんだよなあ】
「やっぱ知らない人多いよね。で、答え合わせなんだけどSランク認定の基準はただ一つ。単騎で国家を転覆できるもしくはその可能性がある探索者、ってことになってる」
【は、国家転覆?】
【急に話が恐ろしくなったな】
【そんな奴いてたまるか】
【え、じゃあネクサスには国家転覆できる存在が三人もいるってこと?】
「ま、そんな反応になるよね。でもちょっと考えてみてよAランクは日本だけでも100人以上いるのに比べてSランクは全世界で18人だよ? それぐらいの差はあるってもんよ。つまりSランクってのは完全なイレギュラーというか国としてもおとなしくすることをお願いすることしかできない存在なんだよね。例えばAランクまでは国からのほぼ強制な依頼が下りることもあるんだけどSランクにはそれがない。もう、国が管理できる存在じゃないからね」
【Sランクってそんなヤバいんだ...】
【今までSランクの人数少ないなって思ってたけど今は逆に一人で国家転覆できるやつが世界には18人もいるのかよって思って震えてる】
【触らぬ神に祟りなしってやつか】
「で、Aランクは実力の幅が大きいって話に戻るけど。要はSランクの基準がそんなだからどんなに優秀でも単純に火力というか、集団を殲滅する能力がないとSランクにはなれないんだよね。うちのなかでAランクのユウカちゃんとリキヤはそれぞれヒーラーと壁役つまりタンクなんだよね。二人ともとっても優秀でユウカちゃんは死んでさえいなければ基本どんな傷も治せちゃうしリキヤはなんならSランク相手の攻撃だって受けられちゃうんだけど攻撃力が普通のAランク程度だからSランクにはなれないってわけ。んで、そんな中俺は二人みたいにずば抜けた武器があるわけじゃない普通のAランクだからついていくのが結構大変なんだよ」
Aランクってなるだけならそこまで難しくないからなあとこぼすレイにコメント欄が騒ぐ。
【普通のAランクってそれで十分というか我々からしたら雲の上の存在なんですがそれは】
【てかユウカちゃんとリキヤさん二人とも攻撃する係じゃないのに普通にAランク並みの攻撃力あるんかい】
【あれ、おかしいなAランクになるのって大したことないんだっけ?】
【落ち着け! Aランクは2000人に1人の割合の超強い存在だぞ】
【これから探索者を目指す人はこれ聞いて勘違いすんじゃねえぞ!! Aランクなんて余裕とか油断かましてたらマジで一瞬でお陀仏だからな!!】
【探索者が必死に訂正してて草】
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