【悲報】将来はダンジョン探索者になろうと約束した幼馴染たち、俺以外全員人外レベルの実力を身につけてしまう~いや、貴方も大概化け者ですよ!?~

@Ciel1024

第1話プロローグ

「大きくなったらダンジョン探索者になろうよ!!」


幼い頃俺が幼馴染たちに投げかけた言葉。


一番やんちゃだった男の子は

「いいな、それ。俺たちで最強になろうぜ」

と乗り気で


男勝りだった女の子は

「アタシは面白ければなんでもいいぜ」

といい


怖がりだった女の子は

「私怖いよ。この前テレビで見たけどあんなおっきな化け物となんて戦えないよ」

と消極的で


それを聞いた一番体が大きかった男の子は

「大丈夫、僕が守ってあげるよ」

とその子を励まし


一番賢かった女の子は

「ダンジョン。未知がたくさん、面白そう」

と乗っかった。


そのころテレビでやっていたダンジョン特集に影響された俺が特に何も考えずに放った言葉。


それがまさか


「こんなことになるとはなあ」


大きくため息をつきつけに突っ伏していると部屋の扉がコンコンと音を鳴らす。ノックの後眼鏡をかけたクールな女性が部屋に入ってくる。


「失礼します。...どうされたんですか?」


俺を見るなり可哀想なものを見るような目を向けてくる。


「アオイか。いやあ、この雑誌を見てたら昔のことを思い出してね」


見ていた雑誌をアオイのほうに向ける。


「これは最強の探索者特集ですか。良かったじゃないですかレイさんのパーティーが最強になってて」


「そもそもダンジョンに潜ったこともない奴がどうやって最強を決めたのかが謎だけどね。...まあ、実際うちのパーティーの連中が一番強いけどさ。...リーダーである俺以外はね」


子供のころの約束は大きくなって実際に果たされた。


一番やんちゃだった男の子は誰も並び立てないほどの腕を持った無双の剣士となり男勝りだった女の子は誰も追いつけないほどの速さを手に入れたりなど幼馴染全員がそれぞれとんでもない才能を持っていた。


そう、言いだしっぺの俺以外は。


「そもそもなんで俺が未だにリーダーなんてしてるんだよって話じゃん?この記事でもそうだけどネットでもなんでも俺があいつらの仲間だったてことすら世間には知られていないわけだし。ほら雑誌の見出し“最強の幼馴染5人組”だとさ」


アオイに愚痴をこぼす。


「そんなこと言うなら一緒にダンジョン潜ればいいじゃないですか。最近レイさん一人でしかダンジョン探索いかないじゃないですか」


「そんな簡単に言うなよ。あいつらと一緒に潜ったら最低でも深層まで行くことになるんだぜ。命がいくつあっても足りないよ」


それが理由で俺は仲の良かったパーティーをいくつか誘ってクランを作ってわざわざクランマスターという面倒な役職に自らを置いたのだ。暇なところをあいつらに見せたら必ずダンジョンに連れていかれるからな。そのかいあって、俺は幼馴染たちとダンジョンに潜るペースをひと月に一回ほどに抑えられているのだ。下層ならともかく深層以上になると俺はあいつらと違ってしっかりした準備をしないと死んじゃうからな。




今からおよそ30年前突如世界中にダンジョンというファンタジーの産物が現れたと同時に魔法などの超次元的な力を人類は手に入れた。当時はずいぶんと混乱が起き多くの死者も出たようだが今となっては法整備も進みダンジョン探索者という職業は子供のなりたい職業ランキング1位とまではいわなくても立派に職業として世間的に認められるようになった。特にここ数年はダンジョン探索の様子を届ける配信者も現われはじめ探索者界隈は盛り上がりを見せている。



「そういえばアオイ、俺になんか用か?」


「そうでした、ダンジョンシーカーからクラン合同ダンジョン攻略のお誘いです」


「えー、また? あまりにしつこいからこの前やってあげたばっかじゃん」


「それが、...今度はネクサスを連れてこいと」


ネクサスとは俺たち幼馴染組のパーティー名だ。


「それはそれは、随分と調子に乗ってるみたいだねえ」


少しイラっとして声が低くなり、アオイの表情が強張る。


「ああ、ごめんね。怖がらせるつもりはなかったんだけど。それであちらさんの目的はうちの戦力分析かな?」


「ッ...ええ、おそらくそうでしょう。返事はどうなさいますか?」


「もちろん拒否だよ、あいつらレベルのためにネクサスが出張ってくるなんてありえない。...というかダンジョンシーカーは俺たちのクランよりも自分たち格上だと思ってるみたいだねえ」


ひどい勘違いもあったもんだ。


「ですが、ダンジョンシーカーが現在最大規模のクランであることは間違いないですし、世間的にもクラン単位ならダンジョンシーカーが最強であるという意見が強いですよ?」


「へー、アオイもそっち側の意見?」


ちょっと威圧しながら質問する。多くの場合威圧に負けて自分の意見を言わない人が多いが...


「ッ! ......私もクラン同士で全面戦争になったらうちは分が悪いかと。こちらは皆さん強いとはいえ総勢20人ほどなのに比べ、あちらは3桁を軽く超えていますし、Aランクの探索者も10人以上抱えています」


アオイはちゃんと自分の意見を発言できる人間だ。まったく素晴らしい人材だね。


「そっか、やっぱりダンジョンに潜ったことない人からしたらそう見えるのかー。アオイ君、SランクとAランクの差ってどれぐらいあると思う?」


「差ですか...」


言葉に詰まるアオイ。


「あー、聞き方が悪かったね。じゃあ、Aランクが何人いればSランクと戦えると思う?」


「2人、いや3人でしょうか?」


「やっぱりそのレベルの認識か。多分ダンジョンシーカーも同じような認識なんだろうね。一般人や経験が浅い探索者がよく勘違いしてることなんだけど、答えはAランクが何人束になってもSランクには勝てない、だ」


「ッ! そこまで差があるのですか!?」


「まあ、Sランクは世界全体で18人なのに対してAランクは日本だけでも100人以上もいるからね。それだけ差はあるってもんよ。それにAランクは俺でもなれるレベルのものだから」


幼馴染連中は5人中3人がSランクだ。世界全体の6分の1が日本の一つのパーティーに所属しているのだから過剰戦力にもほどがあるというものだ。ダンジョンシーカーは比較的最近できたクランだからSランクがどれほど理不尽な存在か知らないのだろう。


「じゃ、俺は今からダンジョンに潜るからあとはよろしくね」


「は、はい。分かりました。ちなみにどちらのダンジョンに行かれるので?」


「うーん、今日は渋谷ダンジョンの下層に行こうかな」


「分かりました。それではお気をつけて」


その声を背後に受けながら俺は部屋を出るのだった。




「下層に行けるのは超一流の探索者だけのはずなのですが......それをあんな散歩に行くような感覚でいかれるとは」


SランクとAランクにそこまで大きな差があるとは知らなかったがAランクは間違いなく探索者のなかでトップクラスである。現在探索者として日本で活動している人の数は約20万人と言われている。そのなかでAランクは100人ほどなので2000人に一人の割合である。


「間違いなくトップクラスであるのに自分を卑下されるのは周囲が優秀すぎたからなのでしょうね」


そんな方たちのもとで働くのだからもっと知識を身に着けていかなくてはと気持ちを改めるアオイなのであった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る